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あいの向こう側
第3章 漂う
花井は既婚者で、
小学生の子供が2人。


直属の先輩でもないし、密に関わったことはないけれど温厚で男女関わらず社員から慕われている。


だから、
下心なんてあるわけない……………



牛の赤身ステーキを咀嚼しながら、
花井は『心配してたんだ。一緒に合同で仕事をしたときも君は真面目に1人残って作業をしていたから…』
と落ち着いた声で話す。



『……ありがとうございます。
色々あったけれど、
もう良いかなって思ってます』
朱里は微笑んだ。







――――それでも私は、
何かにすがりたかったのだろうか。


2時間後、
寂れたホテルの一室で朱里は花井を受け止めた。
唇を重ねて服を一枚ずつ剥がされていく。

『はあっ……』

花井は無言で、丁寧に愛撫する。
朱里の首筋を舐めながらシャツを脱がしていく。


スリップ一枚になった朱里を、
ベッドに押し倒した。


朱里の目が潤む。

あの時、
激痛が腹に走った。

朦朧とする意識のなかで、ずるりと生暖かいものが流れた。

花井の男根が入っている場所から、
確かに何かが溢れて流れて朽ちていったのだ。


まだ形のない、
いきものが…







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