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あいの向こう側
第7章 堕落する君と
――――――――
『鮫島くん、ちょっと〜』課長に呼ばれて席を立つ。


『この間の企画ね、
評判良かったよ。
製作部に回してみるからね』


『――は。
ありがとうございます』
俺は丁寧に頭を下げた。



(………一杯やってくかな……)


自分への褒美といっては小さいけれど、
たまには自身を労うことも大切だ。


退社しようとPCを仕舞っていると猫背でフラフラ帰っていくヤシロが見えた。



『ヤシロ〜〜〜くん?
飲み行かない?』
俺は懇親の機会を作ろうと提案し声をかける。


ヤシロは肩をびくっと震わせ、
『す、すみません……
は、ハハオヤが体調悪くて早く帰らないと………』
とあからさまな嘘を述べる。



青ざめて小刻みに震えているのがわかった。
『脅してるわけじゃないんだけどね……』


『すみませんっ』
そう一言いうと、ヤシロは脱兎の如く素早く社を出て行った。


実和子が『ほーら、
キツイんだってば。もっと柔軟にしなきゃ』と呆れた顔をした。

『付き合いって当然だろ?出来ないのが悪いんだよ。社員数少ないんだし、皆がフルで出来なくてどーすんの?』

実和子と並んで歩く。

『皆が鮫島くんみたいに強くないんだってば。
あたしだって1人で泣いたりさぁ、あるわよ』

『へぇ(笑)
想像つかねー』せせら笑いをすると、
実和子がむぅっとして『じゃーあたしは子供の迎えあるからここで』と去っていく。
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