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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
「少し弾けすぎだけど、なんかそれもヴィヴィらしくてOK!」
『喜びの島』を弾き切ったヴィヴィにそう太鼓判を押して、次回の課題曲を与えてくれたピアノ講師を見送ったヴィヴィは、ヴァイオリンの練習と勉強を終えると、ダイニングへ向かった。
「ヴィヴィ、一人かぁ……」
3メートルは超すダイニングテーブルに一人で、ぽつんとディナーをとるヴィヴィは、思わずそう呟く。
「いつもは必ず、クリス様がご一緒ですものね」
そう相槌を返してくれる匠海の執事・五十嵐に、ヴィヴィは頷く。
朝比奈はというと、クリスの容体が良くないらしく、付きっきりで看病しているらしい。
(クリス、大丈夫かなぁ……。インフルエンザでは、ないらしいけれど……)
一人で食べても美味しくなく、食の進まないヴィヴィを、宥めすかしながら何とか食事をとらせた五十嵐が、食後の果物の乗った皿を、主に給仕しながら見詰めてくる。
「お嬢様、宜しいですか? 今、寝込んでいらっしゃるクリス様を安心させる為にも、お嬢様は日々の生活をきちんと送りましょう。もしお嬢様が食事も採らず、勉強も予定通り進んでおられませんと、クリス様はますます心配になられ、ご回復も遅くなりますよ?」
「うん……。そうだね、五十嵐の言う通りだね! ヴィヴィ、頑張るっ! 一人でも居眠りせずに、お勉強、頑張るっ!!」
薄い胸の前で何故かファイティングポーズをとりながら、そう物凄く低レベルな意気込みを発したヴィヴィに、
「いいお返事です。私もフォローさせて頂きますので、頑張りましょうね?」
そう優しく返してくれた五十嵐に、ヴィヴィはにこりと微笑んで見せた。
(今のところ……、朝比奈だったら「いや、もっと頑張りましょうよ……」って突っ込んできたな……)
双子付きの執事のことをちらりと思ったヴィヴィは、彼も看病疲れしていなければいいけれど、と少し心配した。
その後、宣言通り『教育兄』のスケジュールに沿って勉強に励んだヴィヴィは、一度だけウトウトして五十嵐に起こされたが、何とか本日の予定を終了した。
バスの用意を整えてくれた五十嵐に礼を言ってバスタブで温まっていると、ピンピロリン♪とスマートフォンが鳴った。