この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
「ね~、ね~、クリスのお見舞い、しちゃダメ~?」
16:00。
リンクから戻ったヴィヴィは、そう甘えた声で朝比奈を見上げる。
「駄目です。お嬢様に風邪がうつりでもしましたら、大変ですからね」
その朝比奈の返事に、自分が風邪で熱を出した時も、クリスは遠ざけられていたなと思いだす。
「う、ん……。あっ! じゃあ、クリスにお手紙書くから、渡してくれる?」
「ええ、勿論です」
そう言って微笑んだ朝比奈に、ヴィヴィは大きな瞳を輝かせて書斎へと向かう。
そしてPCを立ち上げると、「ふんふんふ~ん♪」と鼻歌を歌いながら何か作業を始めた。
「お嬢様? お手紙を書かれるのではなかったのですか?」
不思議そうにそう尋ねてくる朝比奈に、ヴィヴィはプリントアウトしたものを、指先で摘まんでぴらりと見せる。
「書いたよ~!」
ヴィヴィが掲示して見せた一枚の紙には、金髪の人らしきものが、白と黒の何かと、何かをしているらしい絵柄と、その下には
「Dear クリス
早く元気になって、一緒に滑ろうね?
From ヴィヴィ」
とカラフルな文字でメッセージが入っている。
「これ……、何ですか?」
「え? FPの牧神の午後、踊ってる、クリスの図」
「……さ、さようでございましたか」
「わ、分からない、かな……?」
昨年のTHE ICEで皿の絵付けをした時も、『絵がへ――じゃない、独創的過ぎて、わからない』と自分の描いたビリケン様が酷評だったことを思い出し、ヴィヴィは「しょぼん……(´・ω・`)」とうな垂れる。
「いえ、クリス様ならお解かりになるでしょう。なんでも、クリス様だけがこの世で、お嬢様の描いた絵が読み取れる唯一の人物、なのですから」
その全くフォローになっていない朝比奈の発言に、ヴィヴィはデスクに両手を付いて、更にうな垂れた。
「ど、どうせ……orz」
「さあ、もうすぐピアノの講師がいらっしゃいますよ。これはきちんとクリス様にお渡ししておきますので、お嬢様は急ぎましょうね?」
そう朝比奈に急き立てられ、ヴィヴィは1階の防音室へと急いだ。