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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
「こちらこそ宜しくお願い致します。では、失礼致します。お休みなさいませ」
「おやすみなさ~い!」
明るい声で見送ったヴィヴィは、リビングと廊下を結ぶ扉が閉められた途端、ふうと息を吐き出した。
(う~ん。あの感じだと、確実に胸は見られたよね? 下は……? 見えてたか……。今日のお湯、透明だったし……)
先程の五十嵐はとても落ち着いて見えたが、いつも静かで物腰柔らかな彼とは程遠かった。
ヴィヴィはこくりと、グラスの水を飲み下す。
(ま……、五十嵐もこんな子供の躰見たからって、何とも思わないでしょう……。だって、ヴィヴィ、『棒っきれ』で『ガリガリ子ちゃん』だし、『つるぺた』だし、何たって『お子ちゃま』だからね――っ!!)
一人で頭の中でそう叫んだヴィヴィは、コツンと音を立ててグラスをテーブルの上に置き、立ち上がった。
リビングの照明を落とそうと壁のパネルを触れた時、ヴィヴィはふと気になって、匠海への私室の扉のほうへと視線をやる。
もうおそらく9月まで、部屋の主が使用することはないであろう、その私室。
「ふんだっ」
ヴィヴィはガキ丸出しでそう呟くと、キングサイズのベッドの上にダイブし、とっとと寝た。
その裏で――、
クリスの私室に様子を見に訪れた五十嵐が、双子の執事・朝比奈を見つけ、口を開いた。
「朝比奈……、君、よくあの双子に、同時に仕えることが出来るね……」
心底疲れ果てたようなその五十嵐の様子に、
「ふふ。面白いでしょう、ヴィクトリア様は?」
そう余裕で返した朝比奈は、にこりと微笑んだ。
「君は凄いよ……」
そう言って脱力した五十嵐がいた事は、ヴィヴィの知るところではない。