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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
1月5日。
5時に起床したヴィヴィは手早く準備を済ますと、階下へと降りていく。
「おはよう、五十嵐。クリスの状態はどうか知ってる?」
玄関ホールに控えていたのは、五十嵐ただ一人だった。
朝比奈は今日も、クリスの看病をしているのだろう。
「おはようございます、お嬢様。クリス様はまだ高熱が続いております」
「そう……。しんどいだろうな……」
ヴィヴィは五十嵐からiPadを受け取ると、車に乗り込む。
(変われるなら、ヴィヴィが変わってあげたい。それか、双子なんだし、苦しいことは半分個するとか……。クリス、早くリンクに行きたいだろうな……)
「クリスも頑張ってるんだから、ヴィヴィはもっと頑張ってくる!」
そう言って、見送ってくれる五十嵐を車の中から見上げれば、ふわりと微笑まれた。
「ええ、良い心掛けですね。お気を付けて、いってらっしゃいませ」
「行ってきます!」
その言葉通り、7時間のリンクでのレッスン、1時間のバレエスクールでのレッスンを終えて帰宅したヴィヴィは、楽器の練習、勉強に励んだ。
そしてまた一人で寂しくディナーをとっては、やっぱりクリスがいないと寂しいと凹む。
私室に戻ったヴィヴィは、クリスの部屋へと続く扉を開け、覗き込んだ。
紺色のファブリックで統一されたそこには、朝比奈がトレーを手に立っていた。
その表情が何故かとても曇っていて、ヴィヴィはどきりとする。
「あ、朝比奈……?」
小さな声でそう呼べば、はっと顔を上げた朝比奈がヴィヴィに気づき、表情を緩めた。
「お嬢様、どうなさいました? ディナーはちゃんと、とられましたか?」
トレーを置いてこちらに近づいてきた朝比奈に、ヴィヴィは頷く。
「うん、ちゃんと食べてる。ねえ……、クリス、そんなに悪いの……?」
「そうですね。熱がなかなか下がりませんで、おそらく明日は学校をお休みされると思います」
心配そうに眉を潜めた朝比奈に、ヴィヴィの表情も曇る。
「そっか……。半分個、出来ればいいのに……」
「お嬢様?」
思わず心の声が漏れてしまったヴィヴィは、ちょっと焦りながら説明する。