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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章        

「あ……。ほ、ほら、双子だから、苦しいことは半分ヴィヴィにくれれば、クリス楽になるかと」

(ガキっぽい考え、って思われるんだろうな……、くすん)

 現実的で無い事を言っているのは分かっているが、どうしてもそう思ってしまうのだからしょうがない。

 目の前の朝比奈から、ふっと小さな笑い声が降ってくる。

「そうですね。私も同じ思いでしたよ」

「朝比奈……。あの、朝比奈もちゃんと休んでね?」

 そうヴィヴィがお願いすれば、朝比奈は不思議そうに見下ろしてくる。

「えっと、散々迷惑掛けてるヴィヴィが、言えた事じゃないんだけど。朝比奈は無理して、お休みなかなか取らないから、ヴィヴィ、心配……」

 背の高い執事を見上げながらそう説明すると、ポンと頭を撫でられた。

「ありがとうございます。大丈夫ですよ。執事というのは体力勝負ですから、ちょっとやそっとではへこたれません」

「うん……。クリスの事、お願いね?」

 そう申し訳なさそうに呟いたヴィヴィに、朝比奈は微笑んでくれた。

「ええ。お嬢様がいらしたことは、クリス様にお伝えしておきます」








 書斎のPCで、予備校の講義を3倍速で観ていたヴィヴィは、少し耳が疲れ、動画を一時停止した。

 ふうと小さく息を吐いて、五十嵐が入れてくれていた紅茶に口を付ける。

 その視線の先、書斎の隅で、主宛のファンレターの整理をしている五十嵐が目に入る。

「………………」

(気付かなかった……。五十嵐って、お兄ちゃんと同じ位の背丈だったんだ。さすがに九頭身ではないし、顔も似てないけれど。五十嵐は整った顔をしているし、スタイルも良いほう……)

 ヴィヴィはPC越しに匠海の執事・五十嵐を見つめる。

 黒いスーツを着込んだその肩幅も広く、後姿の上半身など、どことなく似ている気がする。

 一昨日の夜、ピアノを弾くその姿に縋り付いてしまった、あの広い背中に。




     『ヴィクトリア、分かっているね――?

      次会う時まで、俺以外を、

      お前の気持ちいい“ここ”に入れちゃ、駄目だぞ?』




 ヴィヴィの長い睫毛の先が、ふるりと震える。



(入れたら、どうする……?

 ヴィヴィが、他の男とえっちしたら、どうする……?

 例えば、お兄ちゃんの執事の五十嵐と――とか)

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