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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
「うふふ……」
そう愛らしい笑い声を上げたヴィヴィに、振り向いた五十嵐が、瞳を細めて見つめてくる。
「どうされました、お嬢様?」
「ん~ん、なんでもないの。あ、この紅茶、とっても美味しいね」
(そもそも、五十嵐みたいな大の大人が、ヴィヴィなんか相手にする訳ないし……)
もう一度茶器を手に取りこくりと飲んだヴィヴィに、五十嵐が微笑む。
「そちらの銘柄、匠海様もお好きなんです。お嬢様のお口にも合うのではと、ご用意してみました」
「そう。ヴィヴィも、これ好き。ありがとう」
デスクに茶器を戻し、PCに向き直ったヴィヴィは、再生ボタンを押して動画を開始する。
イヤホンから聞こえるのは、異様に甲高く聞こえる講師の声。
けれど、ヴィヴィの耳はそれを音として捉えてはいても、言語としては理解していなかった。
(ふふ、くだらない……)
先程の自分の考えを、頭の中で否定する。
万が一、自分が兄以外の相手と性行為を持ったら、匠海はどうするか?
答えなんて解り切っている。
――捨てられる。
それでなくても、兄は自分を普通に抱くだけでは、興奮しなくなってきているのだ。
これ幸いと、自分を切り捨てるだろう。
それこそ、『人形』の手足をもぎ取り、身ぐるみを剥がして捨てるような、とても残忍なやり方で。
だからという訳でもないが、自分は兄以外の誰もこの躰に受け入れない。
受け入れたいとも思わない。
そこまで落ちぶれてはいない――そう、思いたい。
1月6日。
「Good Morning! Guys! & A Happy New Year!!」
そう元気よく挨拶しながら教室に現れたヴィヴィに、既に登校していたクラスメイト達が、きょとんと見てくる。
「おはよ~。あれ、クリスは?」
「うす! 珍しいな、双子が一緒じゃないなんて」
友人達のその反応に、ヴィヴィは紺色のニットを纏った華奢な肩を落としてみせる。
「クリスね~、3日前から高熱続いてて。今日はお休みするって」
「えっ!? インフルとか?」
クリスの親友のアレックスが、心配そうに見つめてくる。
「それは無いって。風邪と過労みたい」
「みたいって?」
ヴィヴィの返事に、アレックスが被せてくる。