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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
「ヴィヴィも会わせてもらってないのっ! もう3日もクリスの顔、見てない~~!! まじ超ストレスっ!!」
そう叫ぶように喚いたヴィヴィは、近くの机に両手をペチっと付くと、はあはあと荒い息を漏らす。
(クリスのサラサラの髪の毛、もふもふしたいのに――っ!)
「どうどう……。落ち着いてヴィヴィ」
カレンが両手をかざして、ヴィヴィを落ち着かせようとする。
「ご、ごめん……。つい取り乱してしまったわい……」
ヴィヴィは付いていた両手を離すと、腕で額の汗を拭う真似をする。
「わい……? でもいつもセットの双子が一緒じゃないと、なんか変な感じぃ~」
ケイトのその間延びした言い方を、ヴィヴィが真似する。
「ヴィヴィも、変な感じぃ~」
「真似するなっ!」
「えへへ」
ぺろっと舌を出したヴィヴィは、自分の席へと歩いて行った。
学園指定の鞄からテキスト等を取出し、机に直していると、カレンがヴィヴィの頬に手を添えてきた。
「ねえ、ヴィヴィ……。何か、あった?」
「え?」
何の事か分からず、顔を上げたヴィヴィに、カレンが心配そうな表情で覗き込んでくる。
「なんか、すごくやつれて見えるんだけど?」
「へ……? 体重、変わんないよ?」
一応トップアスリートなので、柿田トレーナーに毎日、身体のデータは取って貰っている。
「ん~……、なんていうの? オーラっていうの? うん、生気が足りないような感じ?」
「ふうん~? じゃあ、ヴィヴィ、柳の下にでも立っとく~」
全く心当たりのないヴィヴィは、首を傾げながらそう言う。
「柳?」
「日本の幽霊はね~、柳の下に立ってるんだって~」
ヴィヴィはそう、偏った日本の幽霊事情を披露する。
「へえ?」
「こうやってね……。ひゅ~~、ドロドロドロ~~……」
金色の髪を一房、唇の端に咥えたヴィヴィは、虚ろな瞳で幽霊のポーズ(胸の前で垂らした両手をを掲げる)をしてみせる。
「あははっ! なんか、見たことあるわ、それ!」
心配顔だったカレンが、途端に笑顔になる。
「ヴィヴィ、日本の幽霊のみんながみんな、柳の下にいる訳では無いんだろ?」
近くで二人を見ていたマイクが、面白そうに喰い付いてくる。
「え? そうなの~?」
ジェシカが楽しそうに加わってくる。