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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
皆が新年早々わいわい騒いでいると、ガラガラと扉を開けて、担任が入ってきた。
「お前ら……。高校2年にもなって、まだ7不思議で騒いでんのか……?」
ホワイトボードを見て、そう脱力した担任に、アレックスが、
「ヴィヴィが、どうしても教えろと五月蠅くて」
と、人に責任を押し付けてくる。
「はあ……。ヴィヴィは本当に『お子ちゃま』だなあ?」
担任にまでそうからかわれたヴィヴィは、頬を膨らませた。
「は~い~。どうも、す~み~ま~せ~ん~っ」
「あはは。拗ねるなすねるな! 出席取るぞ~。 欠席は~?」
そう言って破顔した担任は、出席簿を開いた。
「「「クリスで~す」」」
皆が口を揃えてそう言うと、
「知ってる」
と、担任が真顔でしれっと返す。
「じゃあ、聞かないで~っ!」
ヴィヴィが担任にそう突っ込むと、みんながゲラゲラと笑い転げた。
その日の深夜。
クリスの私室への扉を開いたヴィヴィが、その隙間から首を突っ込み、その先に朝比奈と五十嵐を見つける。
そして、
「あ~さ~ひ~な~……っ」
そうヴィヴィが死にそうな声で呼べば、二人に苦笑された。
「どうされました、お嬢様?」
朝比奈が困ったように、ヴィヴィに尋ねてくる。
「今日ね……、BSTで、学園の七不思議の話、してたの……」
そうびくびくしながら言い募るヴィヴィに、
「まさか……怖くて、一人で眠れないと?」
と朝比奈が指摘してくる。
「う、うん……」
(だって、トイレのジェニファーが、PCにぃ……!)
はあ、と主の前にも関わらず、大きな溜め息を付いてみせた朝比奈が続ける。
「お嬢様は、今、何歳でしたかねえ?」
「あ~さ~ひ~な~……っ」
自分の執事のつれない反応に、ヴィヴィは扉を爪で引っ掻きながら再度呼ぶ。
残念なことに、爪で木戸を引っ掻いても、ガラスを引っ掻いた時特有の嫌な音は出なかった。
「お嬢様のその呼び方のほうが、怖いのですが……」
そう言って肩を竦めた朝比奈に、隣の五十嵐が苦笑しながら助け船を出す。
「朝比奈、クリス様は私が診ていますよ」
「申し訳ありません、五十嵐さん」
朝比奈はそう詫びると、ヴィヴィの私室へと入ってきた。