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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章        

 1月7日。

 いつも通り早朝からリンクへと向かったヴィヴィは、朝練を済ませ、学校へと登校した。

 廊下に並ぶ縦長のロッカーに、纏っていた紺色のダッフルコートを脱いで直していると、数人のクラスメイトに「おはよう!」と声を掛けられる。

「おはよ~、みんな~」

 ヴィヴィはいつも通り元気に教室に入ると、自分の席の近くに数人の人だかりが出来ていた。

 その中心にいる人物に大きな瞳を輝かせたヴィヴィは、紺地に赤線のタータンチェックワンピースの裾を翻しながら、小走りで近寄っていく。

「ク~リ~ス~っ! おはようっ!!」

 自分の目の前の席のクリスにそう挨拶し、飛びつかんばかりの勢いでその顔を覗き込む。

 周りのクラスメイト達も、ヴィヴィに「おはよう~」と挨拶してくれたので、ヴィヴィも笑顔で返す。

「クリスっ、もう大丈夫なの? 会いたかったよ~っ!!」

「………………」

 自分の机に両手を付いてそう言い募るヴィヴィに、クリスは黙ったままだった。

「あ、咽喉痛い? 無理して話さなくていいからね。ヴィヴィ、今日、クリスの通訳する~」

「………………」

 ヴィヴィは4日ぶりに会えたクリスに嬉しすぎて、そう一人ではしゃぎ、周りの友人たちに笑われる。

 まだ少し顔色が悪そうなクリスが心配になり、ヴィヴィは右手を双子の兄へと伸ばす。

「熱、ちゃんと下がった~? クリス、頑張り屋さんだから、過労――」

 パシッ。

 教室に響く、鋭い音。

 クリスに払われた自分の右手を、ヴィヴィは咄嗟に左手で掴んだ。

「―――っ 触るな……っ 僕に話し掛けるな……っ」

 そう日本語の、静かな声で言ったクリスは、がたがたと音を立てて椅子を引き、立ち上がると教室から出て行った。

 その場に取り残されたヴィヴィが、大きな瞳をぱちくりとさせながら固まる。

「……ふぇ……?」

(え……、今の、何……? クリス……?)

 放心状態で、目の前のクリスの席を見つめたままのヴィヴィを差し置き、周りのクラスメイト達は、ハチの巣を突いた様に騒ぎ出す。

「ちょ――っ、く、クリス、今、なんて言ったのっ!? 日本語分かんない~~っ!」

「…………、Don't touch me.(触るな) Don't address.(話しかけるな)」

「―――っ ぅうええ――っ!?」

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