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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章
1限目終了のチャイムが鳴り、ヴィヴィは恐る恐る、目の前の席のクリスに後ろから声を掛ける。
「クリス……、ヴィヴィと、お話し、しない?」
「………………」
返事も返さず、こちらを振り向こうともしないクリスに、ヴィヴィは更に言い募る。
「ね、クリス――」
「話し掛けるなって、言っただろっ!」
そう妹を切り捨てたクリスの声は、今までに聞いたことのない、厳しくて冷たいもの。
ヴィヴィの華奢な肩がびくりと震え、一瞬躊躇したが、しかし確認せずにはいられなかった。
「…………、クリスぅ……。ヴィヴィ、なんか、しちゃった……?」
「………………」
その確認にさえも答えてくれないクリスに、ヴィヴィはただ当惑するばかり。
「お~い、クリス。体調は、もう大丈夫なのか?」
ヴィヴィをフォローするような明るい声で、そう入ってきたアレックスが、クリスの金色の髪をくしゃりと撫でながら、その顔を覗き込む。
「アレックス。もう、大丈夫。ありがとう……」
親友に対してのクリスは、いつも通り寡黙だ。
「どうしちゃったんだ、お前……」
「どうって……?」
クリスは何でもない事のように聞き返す。
「いや……なんで、ヴィヴィの事――」
そう続けたアレックスを、クリスが静かに遮る。
「その話は、しないで……」
クリスの後ろの席で困り果てていたヴィヴィの肩を、カレンが後ろから撫でながら口を開く。
「クリス……これじゃ、ヴィヴィが可哀想だよ……。理由があるなら――」
「カレン、悪い。もう、それは“僕の妹”じゃない……」
カレンを遮ってそう答えたクリスに、教室中がしんと静まり返る。
困惑顔のカレンが、
「え……? 何、言って――」
と続けたのを、ヴィヴィが明るい声で遮った。
「あっ! みんな、いいから! ごめんね、巻き込んで、えへへ……」
ヴィヴィはぽりぽりと人差し指で頬を掻くと、椅子から立ち上がり、クラス全員の視線を浴びながら、すごすごと教室から出て行った。
数人のクラスメイトが、ヴィヴィを追い駆けて来て、廊下で止められた。
「ヴィヴィ、大丈夫……?」
「うん、大丈夫……。空気悪くしちゃって、ごめん……」
ヴィヴィは困ったように笑う。