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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第73章        

「ねえ、もしかして。クリス、反抗期……?」

 そうジェシカが口にすれば、皆が頷く。

「あ、私もそれ思った!」

「クリス、家族みんなに、そうなの?」

「わ、分かんない……。ヴィヴィも、クリスが寝込んでから、今日、初めて会って……」

 動揺を隠せないヴィヴィが、そう説明しながら視線を右往左往させる。

「あ、電話して聞いてみれば? 両親とかは寝込んでるときも、お見舞いしてたんじゃない?」

 名案を出してくれたジェシカに、ヴィヴィはぱっと顔を上げると、(本当はいけないのだが)ワンピースの制服のポケットからスマートフォンを出す。

「そ、そうだね! 電話してみる」





『ヴィヴィ~っ! あんた、学校にいるんじゃないの? 何で電話なんて!?』

 開口一番そう言って怒鳴ったジュリアンに、ヴィヴィは焦る。

「あ、きゅ、急用なのっ!」

『何? あ、クリス、体調悪くなっちゃった? 迎え、寄越す?』

 いきなりトーンダウンしたジュリアンの声が、スマホの向こうで響いている。

 おそらくリンクにいるのだろう。

「ううん。元気なんだけど……。えっと、ここ3日ほど、クリス、おかしかったりした?」

『おかしい? 何言ってるの、ヴィヴィったら?』

 娘の的を射ない質問に、ジュリアンは当然、不思議がる。

「えっと、口利かなくなったり、とか……?」

 恐るおそるそう口にしたヴィヴィに、

『どうして? 咽喉は痛いけど、普通に喋ってたわよ?』

とジュリアンは返してくる。

「えっと、ダッドにも?」

『本当にさっきから何を言ってるの、ヴィヴィったら? 当たり前でしょう? 今朝なんか、グレコリーが回復したクリスをハグして離さなくて、遅刻しそうになったらしいわよ?』

「そう……良かった……。じゃあね」

『え……? ヴィヴィ、一体――』




 一方的に会話を終了させた娘に、スマホの向こうから、ジュリアンの戸惑った声が漏れ聞こえていたが、ヴィヴィは通話を切った。

「ど、どうだって?」

 ジェシカの問いに、ヴィヴィは眉根を下げて答える。

「ダッドにも、マムにも、普通だったって……」

「……それは、また……」

「ヴィヴィ限定の、反抗期……?」

 友人達が、困惑顔でそう呟き合う。

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