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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
「いたた……。ご、ごめん……しかし、どうしよう……」
ヴィヴィは引っ張られた耳を手で庇いながら、困った顔で貰った手紙達に視線を落とす。
「とにかく、呼び出されたものは、行ったほうがいいんじゃない?
メルアドを一方的に書いてきた奴は、放って置けばいいよ。
わざわざ、自分のメルアドとか教える必要もないし。他力本願過ぎでしょ?
ラブレターは、返事を書くか、直接言いに行くかだね……」
「な、なるほど……。やっぱ、カレンは頼りになる~!」
自分と違って、年に数回は男子に告白される、モテ女子のカレンに、ヴィヴィは尊敬の眼差しを送った。
そんなこんなで、いきなりモテ期到来になってしまったヴィヴィは、昼休みに教室まで呼びに来て告られた1名と、放課後呼び出された2名に、丁重にお断りをした。
「ごめんね、朝比奈……。わざわざ、迎えに来て貰って……」
ヴィヴィは助手席から、運転席の朝比奈に謝る。
この車は朝比奈のものだ。
双子がいつも使っているベンツは、いつも通りの帰宅時間に、クリスだけを乗せて帰宅した。
「滅相もございません。『電車で帰る』と言われた時は、心臓が飛び出るかと思いましたよ」
「な、なんで……?」
(電車通学くらいで心臓飛び出てたら、すぐ死んじゃうよ……?)
「お嬢様、電車にお一人で乗られたことは無いでしょう? しかも新幹線以外の電車に最後に乗られたのは、10年くらい前ではありませんか?」
「そう、かも……?」
朝比奈の指摘に、ヴィヴィはどうだっけ? と首を傾げる。
「お嬢様お一人で、電車で帰って来られるのは無謀です。まず改札をくぐれません。くぐれたとしても、ホームに辿り着けません。辿り着けたとしても、最寄駅までの電車にきちんと乗れる筈がありません」
そこまでびしりと決め付けられると、ヴィヴィだって拗ねてしまう。
「え~、それくらい、出来るよぅ~~……」
(だって、誰かに尋ねればいいんでしょ? 「松濤に行きたいんですけど?」って。どんだけ『世間知らず』って思われてるんだろう、ヴィヴィは……)
心の中で、そう自分の言い分を主張していると、朝比奈が表情を引き締めて尋ねてきた。
「お嬢様……。クリス様のご様子が、おかしいのですね?」