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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
どうやら、ずっと看病をしていた朝比奈は、クリスに起こった変化に気づいていたらしい。
「……うん……。いつから、なの……?」
「1月4日――発熱された日からです」
ヴィヴィは、指折り数えながら驚く。
今日が8日なので、5日間も前から起こっていたのか。
「そんな、前から……?」
「はい、私も最初は気付いておりませんでした。お嬢様が書かれたお手紙をお渡ししたところ、目を通されませんでしたので、おかしいなと……」
確かにクリスが熱発した日、ヴィヴィはクリスに絵を描いた手紙を贈った。
「そう……」
そう呟いて黙り込んでしまったヴィヴィに、朝比奈が尋ねてくる。
「それとは別に、お嬢様は何か用事があって、下校時刻が遅くなられたのですね?」
「うん……。ちょっと、数人に呼び出されて……」
言い辛そうにそう呟いたヴィヴィに、朝比奈が不思議そうに続ける。
「呼び出し……ですか? ま、まさか――っ!? こ、告白ですかっ!?」
「………………」
返事は寄越さないが、頬を染めたヴィヴィに、ルームミラー越しにそれを確認した朝比奈が納得する。
「そうですか……。私のお嬢様が、ついに殿方から“愛の告白”をされたのですね。執事としては喜ばしい事なのですが……、何故かとても寂しいです」
そう言って少し肩を落とした朝比奈に、ヴィヴィが驚く。
「さ、寂しい……?」
(な、何で……?)
「気分はグランパ(祖父)だから、でしょうかね?」
そう言って首を傾げた朝比奈に、ヴィヴィが噴き出す。
「あははっ! そうだったね!」
明るい声を出した主に安心したように、運転する朝比奈の表情も緩む。
「実は、明日も、なの……。だから、明日は電車で帰るから、乗り方教えて?」
そう縋る様に言って、朝比奈のほうを向いたヴィヴィに、
「いいえ、なりません。明日も私がお迎えに参ります」
と朝比奈は頑なに、ヴィヴィの電車通学を認めない。
「え……? どうして?」
「こんなに愛らしいお嬢様が、お一人で――だなんてっ! 誘拐にあったり、痴漢にあったりされそうで恐ろしく、この朝比奈、生きた心地が致しませんっ」
そう熱く言い切った朝比奈に、ヴィヴィは嘆息と共に呆れた声を上げる。