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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
「海苔巻き? 作るっ! ヴィヴィ、楽しみにしてるねっ」
そうはしゃいで答えたヴィヴィだったが、急にしゅんと落ち込んだ。
「お嬢様? どうなさいました……?」
「料理長……。ごめんなさい、ランチボックス食べられなくて……。せっかくいつも可愛く、作ってくれてるのに……」
ランチタイム、結局、図書館でふ抜けていたヴィヴィは、ランチを取るのを忘れてしまったのだ。
「そういう時もありますよ。でも、明日は残さずに、食べられますね?」
「うん、ヴィヴィ、もう絶対に残さない! だって、こんなに手間が掛かってて、魔法みたいに作ってくれてるって分かったから」
そう16歳にしては、あまりにも子供っぽい返事を返したヴィヴィに、料理長と朝比奈が苦笑する。
「魔法ですか? それはいい――」
1月9日。
「好きだったんだ。ずっと……」
そう愛を囁く男子を目の前に、ヴィヴィからは、昨日の弾ける様な笑顔は消えていた。
(こんなヴィヴィの、どこがいいの……?)
「ヴィヴィ、お人形みたいに可愛くて、最近は本当に綺麗になったのに、全然奢ったところがなくて……。明るくて、ずっと目が離せなかった」
(人形……か……。他人の目から見ても、そう見えるんだ、ヴィヴィって……)
そう後ろ向きな思考に囚われそうになったが、目の前には自分に対して、真剣に気持ちを伝えてくれている人がいることを思い出し、ヴィヴィはちゃんと目を見て対峙した。
告白してくれた男子と別れたヴィヴィは、うな垂れ、てくてく教室へと戻っていたが、
「あ、ランチ食べなきゃ!」
そう一人ごちると、慌てて教室へと向かう。
(昨日約束したんだもん、ちゃんと残さず、感謝して食べるって!)
教室に戻ったヴィヴィは、ランチタイムの残り時間が15分を切っていることに焦りながら、自分の席でランチボックスを開いた。
「あれ、ヴィヴィ。ランチ、今から?」
近くにいたジェシカが、ヴィヴィを見つめてくる。
「うん。いただきますっ!」
そう勢いよく手を合わせたヴィヴィは、フォークを握り食べ始める。
「いつも可愛いよね~、ヴィヴィのお弁当」
褒めてくれたジェシカに、ヴィヴィは自分の事の様に嬉しくなる。