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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章                 

 しかし、その日の放課後、ヴィヴィは途方に暮れていた。

(クリス……。一体、どこに行っちゃったの……?)

 午後の授業に、クリスが出て来なかったのだ。

 そして何故か、カレンも一緒に居なくなった。

 二人のコートや靴が無いことから、学園外に出たかもしれないと皆心配していたが、結局下校時間になっても戻って来なかった。

 ヴィヴィは放課後に呼び出されていた3年生の先輩と、1年生の後輩からの告白を受けると、朝比奈の迎えで屋敷へと戻った。

「クリス様が、先程お戻りになられました」

 二人を出迎えた五十嵐のその言葉に、ヴィヴィは戸惑う。

「…………、ヴィヴィがクリスに、事情を聞きに行ったほうがいいのかな? それともダッドとマムに任せたほうがいい?」

 両親にはBSTから連絡が行っており、既に二人ともクリスの“さぼり”を知っている。

「今、奥様と話されています。大丈夫ですよ、お嬢様」

「そっか……。でも、帰って来てくれて、本当に良かった……。あ、カレンは……?」

 ヴィヴィは心底ほっとしてそう呟くと、スマートフォンでカレンに電話するが、繋がらなかった。

「クリス様と一緒にいらしたのでしたら、確実にお宅にお戻りだと思いますよ? 女の子を一人で放置するような人ではありませんからね、クリス様は」

「うん。きっとうちみたいに、親と話してるんだね?」

 ヴィヴィはダッフルコートの袖を握りながら、俯く。

(きつく叱られてなきゃいいけど……。明日、学校で事情を聞いてみよう……)

 3階の私室に上がったヴィヴィは、着替えて書斎へと向かう。

 平日は本当に限られた時間しか勉強できないので、こんな日でも集中しないとならない。

(それに、クリスの立ててくれたスケジュール、守りたいし……)

 そう思いながらPCを立ち上げたヴィヴィは、「あ……」と小さく声を上げた。

 主の声に反応して、朝比奈がリビングから書斎へと入ってくる。

「どうされました、お嬢様?」

「え、あ、うん……。クリスが作ってくれたスケジュール表が、今日までの分だったんだと思って」

「そうでしたか……」

 朝比奈のその返事を聞いた直後、ヴィヴィはデスクに突っ伏した。

 金色の髪が、その背を庇う様に広がる。

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