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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
その日の深夜。
ヴィヴィは咽喉の渇きを覚え、目を覚ました。
身も心も疲れきっていて、起き上がるのも億劫だったが、なんだか咽喉の粘膜が張り付きそうなほど乾き、しょうがなく暖かな羽毛布団の中から這い出る。
高いベッドから降りたヴィヴィは、リビングへと続く扉へと歩み寄り、ふとその足を止めた。
「あ……れ……?」
寝室とリビングを結ぶ扉が、10センチほど開いている。
(ちゃんと、閉めたよね? 寝るとき……)
ヴィヴィは怖がりなので、扉が少しでも開いていると、その先の暗闇から誰かが覗いていそうで恐ろしい。
だから就寝時はきちんと扉を閉め、ベッドサイドのランプを灯すのも欠かしたことがない。
不思議に思いながらリビングへ入り、壁のパネルに触れて照明を付ける。
時刻は丑三つ時。
嫌な時間に起きてしまったなと、思いながらリビングを横切る。
小さな冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップに注いで咽喉を潤していると、ことりと小さな音がした。
その音がしたほうをばっと振り返ると、その先にあったのは、主不在の匠海の私室への扉。
ぞ~~っ。
ヴィヴィの狭い背中に、悪寒が這い登る。
「で、でたぁ~~っ!!」
そう小さく叫ぶように言ったヴィヴィは、コップをその場に放るように置くと、ダッシュで寝室へと逃げ帰る。
寝室の照明を付けて明るくなった室内で、ヴィヴィはベッドによじ登り、その羽毛布団の中で身を竦ませた。
「お~ば~け~い~や~っ!!」
絹を引き裂くような声でそう悲鳴を上げたヴィヴィは、しばらくそこで小さくなって震えていた。
が、きつい練習で体の疲れがピークに達していたこともあり、数分後には夢の住人になっていた。
1月10日。
朝練を終えて登校した双子は、別々に教室へと向かった。
クリスがヴィヴィを置いて先に行ってしまうのだ。
本当ならば、同じ車に乗るのさえ嫌だという風に。
ダッフルコートを脱ぎ、ロッカーへと仕舞ったヴィヴィは、笑顔で教室へと入った。
「おはよ~、諸君!」
「おっはよ~、ヴィヴィ!」
「諸君て何だよ、諸君てっ!」
速攻でそう突っ込まれ、ヴィヴィは「そういう気分だったの~」と楽しそうに笑う。