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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章                 

「そっか……。ヴィヴィ、やっぱりどっかおかしいんだ……。全然嬉しくないの」

 そう言ったヴィヴィの表情は、曇っていた。

「え……?」

 こんな事を口にしてもしょうがないのに、何だかやるせなくて、ついその薄い唇から零れ落ちる。

「自分が好きじゃない人から、気持ちを伝えられても、嬉しくないの」

「……――っ」

 握っていたカレンの手が、びくりと大きく震え、ヴィヴィは驚いて親友を見上げる。

「え……? カレン……?」

「ヴィヴィには、分かんない……っ」

 長くて綺麗な咽喉から絞り出した様な苦しげなカレンの声に、ヴィヴィは訳が分からずおろおろする。

「……え……?」

(カレン……?)

「ヴィヴィはいつもチヤホヤされてるからっ、そうでない人間の気持ちなんか、分かんないんだよっ!!」

 そう叫んだカレンの顔は、悲しさと悔しさに歪み、そしてとても傷ついた様な表情が浮かんでいた。

「……――っ」

 びくりと固まったヴィヴィの手を振り解いたカレンが、階段を駆け下りていく。

 その足音を聞きながら、ヴィヴィはその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

「……何、やって……」

 薄い唇から零れるのは、自分の不甲斐無さを責める言葉。

(カレンにまで、嫌われちゃった……。

 どうして、上手く出来ないんだろう。不器用にも程がある……。

 ヴィヴィ、もう、自分の事、大っ嫌い……っ)

 カランコロン。

 自分を急かす様に、のどかな音色の予鈴が、階段に鳴り響く。

 ヴィヴィはこのまま教室に戻るのも嫌だったが、先に戻っているかも知れないカレンが、自分が居ないと心配するかもと思い、しょうがなくとぼとぼと階段を昇り始めた。

 教室に入ると、そこにカレンはいなかった。

 ヴィヴィはすごすごと、自分の席へと戻る。

 目の前に座っているのは、自分に憎悪の瞳を向けた双子の兄。

 ヴィヴィは途方に暮れ、ワンピースのポケットから、スマートフォンを取り出す。

 そして一枚の写真を開くと、じっとそれを見つめた。

「ヴィヴィ、何見てんの?」

 近くの席のマイクが、ヴィヴィの手元を覗いてくる。

「おみくじ……? 漢字ばっかりで読めない……」

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