この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
「うん。今年『大凶』引いたの……」
それはおみくじの中でも、めったに引き当てることのない、一番最悪な物なのだと手短に説明する。
「そりゃまた、ご愁傷様……」
「ヴィヴィ、お祓いにでも、行こうかなぁ……」
そう呟いて、ふはぁと魂が抜けた様に息を吐き出したヴィヴィに、マイクが素っ頓狂な声を出す。
「はあ? 遂に神頼みか~?」
お祓いは悪い気を取り除く為のもので、神頼みではないのだが、ヴィヴィは訂正する気にもならず、机に突っ伏した。
「まあ、頑張れ……」
そう励ましてくれたマイクに、ヴィヴィは情けない声を上げた。
「……とほほ……」
学校から戻った双子は、勉強と食事を別々にすると、同じ車でリンクへと向かった。
ダンッ。
ヴィヴィの目の前で、先程から何度も、クリスがジャンプを転倒している。
「クリスっ 違うっ 踏切り、急ぎ過ぎっ」
サブコーチの容赦ない指摘が飛ぶ。
「今度は体が開いている。もっと集中しろっ!」
「はい……」
転倒したクリスが、氷の屑を纏いながらすぐに起き上がり、何度もジャンプを跳び続ける。
何度飛んでも上手く修正できず、さらに悪化の一途を辿っているのが、いつも傍で見ているヴィヴィにも分かる。
「もう、今日はジャンプ練習は中止。全然集中してないし、このままやっていても、怪我するだけだっ」
サブコーチはそう言ってクリスに背を向けると、ヴィヴィへと視線を寄越した。
「ヴィヴィ、FPの冒頭の3回転アクセル、確認して」
「は、はいっ」
鼻を噛んで休憩していたヴィヴィは、薄い手袋を装着し、リンク中央付近へと滑って行く。
冒頭の振り付けから、アクセルへの助走へと入ろうとした時、ドサっと大きな音が近くでした。
助走するヴィヴィの視線の先、クリスが氷に倒れたまま、身動きをしない。
「……――っ」
ヴィヴィは咄嗟にその傍へと滑り寄るが、クリスはやはりピクリとも動かない。
片手が右足首を握っており、ヴィヴィははっとして口を開いた。
「クリスっ! 足、痛めたのっ!?」