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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章                 

「うん。今年『大凶』引いたの……」

 それはおみくじの中でも、めったに引き当てることのない、一番最悪な物なのだと手短に説明する。

「そりゃまた、ご愁傷様……」

「ヴィヴィ、お祓いにでも、行こうかなぁ……」

 そう呟いて、ふはぁと魂が抜けた様に息を吐き出したヴィヴィに、マイクが素っ頓狂な声を出す。

「はあ? 遂に神頼みか~?」

 お祓いは悪い気を取り除く為のもので、神頼みではないのだが、ヴィヴィは訂正する気にもならず、机に突っ伏した。

「まあ、頑張れ……」

 そう励ましてくれたマイクに、ヴィヴィは情けない声を上げた。

「……とほほ……」










 学校から戻った双子は、勉強と食事を別々にすると、同じ車でリンクへと向かった。

 ダンッ。

 ヴィヴィの目の前で、先程から何度も、クリスがジャンプを転倒している。

「クリスっ 違うっ 踏切り、急ぎ過ぎっ」

 サブコーチの容赦ない指摘が飛ぶ。

「今度は体が開いている。もっと集中しろっ!」

「はい……」

 転倒したクリスが、氷の屑を纏いながらすぐに起き上がり、何度もジャンプを跳び続ける。

 何度飛んでも上手く修正できず、さらに悪化の一途を辿っているのが、いつも傍で見ているヴィヴィにも分かる。

「もう、今日はジャンプ練習は中止。全然集中してないし、このままやっていても、怪我するだけだっ」

 サブコーチはそう言ってクリスに背を向けると、ヴィヴィへと視線を寄越した。

「ヴィヴィ、FPの冒頭の3回転アクセル、確認して」

「は、はいっ」

 鼻を噛んで休憩していたヴィヴィは、薄い手袋を装着し、リンク中央付近へと滑って行く。

 冒頭の振り付けから、アクセルへの助走へと入ろうとした時、ドサっと大きな音が近くでした。

 助走するヴィヴィの視線の先、クリスが氷に倒れたまま、身動きをしない。

「……――っ」

 ヴィヴィは咄嗟にその傍へと滑り寄るが、クリスはやはりピクリとも動かない。

 片手が右足首を握っており、ヴィヴィははっとして口を開いた。

「クリスっ! 足、痛めたのっ!?」

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