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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章                 




   『クリスはきっと、ヴィヴィだけに反抗してるんだ……。 

    それってきっと、ヴィヴィが一番近くにいて、

    一番深くクリスに関わって来たから……、なんだよね?
   
    光栄な事なんだ……。

    ヴィヴィ、傍で静かに見守って、支える事が出来ればいいな……』




 クリスの反抗期が来たと確信した時、確かに自分はそう決意した。

 それを支えに、本当は辛くて寂しかったけれど、どんと構えて受け止めようと耐えてきた。

(反抗期、なんかじゃ、なかったんだ……。

 ヴィヴィが、クリスに嫌われただけだったんだ)

 ヴィヴィの顔がくしゃりと歪み、震える両手がそれを隠すようにかざされる。

「……――っ」

(何を、思い上がって、たんだろう……。恥ずか、しい……)








 数十分掛けて何とか心を落ち着けたヴィヴィは、クリスの足の具合が気になり、リンクへと戻ろうとした。

 廊下を歩く先、フィットネスルームから出て来た人物に、ヴィヴィは咄嗟に声を掛けた。

「柿田トレーナー! あ、あの……、クリスの状態、どうでした?」

「ああ、ヴィヴィか。クリスは問題ないよ、大丈夫。転倒の仕方が酷くて、ただ痛くて動けなかったらしい」

「そう、ですか……。良かった……」

 心底ほっとした様に脱力したヴィヴィに、柿田トレーナーが苦笑する。

「心配だったね?」

「はい……。あ、あの……、しばらくヴィヴィの事はいいので、クリスの事だけ、見てくれませんか?」

 トレーナーもコーチも、双子の事を同時に見ていて、大変なのだ。

 ヴィヴィの面倒を見ずにクリスに掛かり切りになれば、ジャンプの状態も、きっと良くなる筈。

 柿田トレーナーは、ヴィヴィの申し出に驚いたようだったが、やがて笑顔になった。

「…………。ふふ、君たちは本当に、似ているね?」

「え?」

(何のこと……?)

 ヴィヴィは意味が分からず、柿田トレーナーを見つめ返す。

「クリスも全く同じ事を言ってきた。ヴィヴィがアクセル、飛べなくなってた時」

「……――っ」

(う、そ……、クリス……)

 全然知らなかった事実に、ヴィヴィは大きな目を見張った。

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