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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第74章
「君達は互いに想い合える、本当に良い兄妹だ。
きっとすぐに分かり合えて、仲直り出来るよ。
僕はそう信じてる」
そう言って金色の頭をポンと叩いた柿田トレーナーに、ヴィヴィは小さく頷いた。
「……は、い……」
「先に行ってるね?」
ヴィヴィから手を離した柿田は、そう言い置いてリンクへと向かって行った。
「………………」
長い廊下に、ヴィヴィは立ち尽くす。
体の横にだらりと下ろしていた両腕の先が、ぎゅうと握り込まれ、小刻みに震えた。
(ううん……。もう、駄目だ……。
クリスは絶対に、ヴィヴィを許さない――)
この過ちを正せば、断ち切れば、クリスは許してくれるのだろうか。
もしそうだとしたら、自分はどうする?
どちらを選ぶ――?
解からない。
判断出来ない。
決断、出来ない。
自分はなんて駄目な人間なんだろう。
クリスとの関係を壊すことも、
許されぬ罪を辞めることも、
どちらも出来ない。
ただ分かった事がある。
“狡い”のは、何事からも目を背け、
見ないふりをしてきた、他でもない“自分”。
諸悪の根源は、どちらも手放せない、どちらも欲しがる、
“狡い自分”だったのだ――。