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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章            


 幼い頃、一緒にした、

 かくれんぼ。

 悪戯。
 
 ごっこ遊び。

 おままごと。

 広い庭に置いた、小さな簡易プール。

 そして――、

 いつもヴィヴィの隣にいたのは、双子の兄、クリス。

 自分とそっくりなその容姿は、まるで合わせ鏡を見ているよう。

 けれど、頭の中は、心の中は、

 全く違うことを思い描いている事を、自分達は知っていた。







 ミンミンゼミが鳴き始め、それが五月蠅くなり始めた頃。

 篠宮邸の庭の木陰に置かれた籐編のソファーには、小さな双子が眠っていた。

「あら、静かだと思ったら、寝ちゃってたのね?」

 母ジュリアンの楽しそうな声に被せ、

「ああ、本当だ。匠海も一緒に寝れば?」

 父グレコリーの面白がった声が聞こえる。

「子供は体温高いから、熱い……」

 こちらもまだ子供そのものの匠海が、そう嫌そうな声を上げた。

(むぅ……おにいちゃま……)

 うとうととしていたヴィヴィは、匠海のその返しにむぅとしたが、それよりも眠気のほうが勝ち、そのまま起きない。

「でも、やっぱり可愛いな」

 そうぼそりと囁いたのは、まだ少年の声の匠海。

「ええ、双子の天使ですね」

 柔らかい声で続けたのは、双子の執事・朝比奈。

「匠海様、アイスティー、こちらにお持ちしますか?」

 匠海の執事・五十嵐のその言葉に、匠海は「むこうで飲む」と答え、そこから人の気配が消えた。

 そしてヴィヴィは、深い眠りへと落ちていく。

 数十分後。

 クリスの瞼が、ゆっくりと持ち上がった。

 その表情は、まだ眠たそうなもの。

 先程までヴィヴィと、広い庭で追いかけっこをしていたので、くたくたなのだ。

 灰色の瞳が、目の前でく~く~眠るヴィヴィを映し出す。

 クリスの小さな手が、ヴィヴィの顔の傍にある、同じく小さな手を握る。

 その柔らかな感触に安心したように、クリスの瞼はまた閉じられた。

 大きな桜の木の下、日蔭で眠り続ける双子に、時折木漏れ日がちらちら降り注ぐ。

 その傍には、うちわで柔らかい風を送りながら、双子を見守る朝比奈。

 数分後。

 今度はヴィヴィの瞼が少しずつ持ち上がる。

 細く開いた視界に、双子のクリスの寝顔があり、ヴィヴィはほっとする。

(クリスが、一緒なら、あんしん……)

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