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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章
「一緒……」
左側に抱っこされたクリスが、そう小さな口で呟く。
「うん、ずぅ~~っと、一緒だよ、クリス」
匠海の腕の中で、ヴィヴィは幸せそうに微笑む。
(クリスとヴィヴィは、ずっと一緒なの……。だって、2人でひとつ、なんだもん)
そう思いながら、繋いだままの左手をギュッと握ると、クリスもギュッと握り返してきた。
「一緒、だね……?」
自分そっくりのクリスの顔が、ふわりと綻ぶ。
「うんっ!」
双子はくりくりの瞳で見つめ合うと、にっこりと微笑んだ。
(小学生になっても、大人になっても、それ以上になっても、
ずっと、ずぅ~~~っと、ヴィヴィとクリスは一緒なのっ)
1月11日、早朝3時。
ヴィヴィは苦しげな唸り声と共に、目を覚ました。
かっと見開かれた灰色の瞳には、当惑と、焦りと、哀しみが、ごちゃ混ぜになって浮かんでいる。
『汚らわしい――!』
昨晩、クリスから浴びせ掛けられた言葉が、ヴィヴィを貫き、咄嗟に掌で両耳を押さえる。
それでも頭の中の罵声は止まらない。
『血の繋がった実の兄と、躰の関係を持つだなんて……っ』
『しかも、女のお前のほうから、兄を拘束し、無理やり犯しただなんて!』
『どこかから情報が洩れましたっ 屋敷の前にマスコミが殺到しています』
『どのテレビ局も、雑誌社も、全てこの醜聞を取り上げいる……』
『篠宮家の顔に、泥を塗って……っ』
『社長、株価が暴落していますっ このままでは――っ!?』
『英国の両親の生家にも、マスコミとパパラッチが張り付いているそうだ……』
『日本スケート連盟にも、ISUにも苦情の電話が殺到していますっ』
『こんなっ 前代未聞ですよっ! オリンピック金メダリストが、き、近親相姦だなんてっ!?』
『ジュリアンコーチ、スキャンダルのある選手を、試合には派遣できませんよ?』
『ずっと、ずっとファンだったのに! 酷いっ こんな形で裏切られるなんて――っ!!』
『スポンサーがすべて撤退すると言ってきました。さらに契約未経過分について、訴訟を起こすと……』