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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章
夢の中で浴びせ掛けられた、批難と怒号の数々。
生まれてこの方、目にした事の無い、両親の悲しみに暮れた顔。
親族の皆が怒り狂い、余りの醜聞に、感情をコントロール出来ない表情。
コーチ陣が、スケ連の幹部が、悲嘆と困惑に揺れる顔。
ファンや周りの、蔑み軽蔑した表情。
目が眩んで前も向けないほどのフラッシュに、信じられない数のマイク、浴びせかけられる質問と追及の手。
『全てお前の責任だ、ヴィクトリア――っ!!』
何故かその罵声は、匠海の声と同じもの。
「―――っ!!!」
ヴィヴィの薄い唇から、声にならない悲鳴が漏れる。
『やめろっ! ヴィヴィ……っ
俺達は、正真正銘、血の繋がった兄妹なんだぞ――っ!!』
『天真爛漫で売ってるのに、実は兄に欲情して強姦する売女なんて、
詐欺もいいところだよなあ?』
だから兄も言っていたではないか。
初めから、これは許されない事なのだと。
なのに馬鹿な自分は、自分の気持ちを信じて、それだけを優先して、ここまで来てしまった。
全てから目を背け、目に入っても見ないふりをし、自分の都合だけでここまで辿り着いてしまった報いが今、眼前に突き付けられている。
それも、双子の兄の手によるという、最悪な形で――。
キングサイズのベッドの上、ヴィヴィの華奢な体が折り畳まれ、これ以上ないほど小さくなる。
その両耳はまだ、引っ掻くように強張った掌が覆っていた。
諸悪の根源は“狡い自分”。
なのに今の自分は、匠海を選ぶ――匠海“だけ”を選ぶという決断が出来ない。
兄が自分を愛してくれるという保証が、どこにも無いから。
もしかしたら、愛するどころか、憎まれているかもしれないのに。
兄を選んだその先に待ち受けているのが、喜びなのか、絶望なのか、分からないのに――選べない。
「……――っ」
ヴィヴィは両耳を押さえていた手で、金色の頭を掻き毟る。
(お兄ちゃんに、会いたい……)
どんなに酷い事を言われてもいい。
『鞭』を与えられてもいい。
ただただ、あの暖かい躰を確かめたかった。
今の自分が唯一信じられ、心も躰も預けられる、兄の暖かさに――。