この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章            

 動いたのはクリス。

 リビングの入り口で呆けている妹の傍まで寄ると、ナイトウェアから覗いた手首を掴んだ。

 ヴィヴィの体がびくりと震える。

 クリスはきっと触れたくないだろう、と思ったのだ――汚れてしまったヴィヴィの体になど。

 けれどクリスはそのまま妹の手を引いて、ソファーまで導いて行った。

 ヴィヴィの肩に両手を添えたクリスは、妹をソファーに座らせ、自分もその隣に静かに腰を下ろした。

「昨晩は、ごめん……」

 唐突にそう切り出したクリスに、ヴィヴィは目を見開いた。

 そしてクリスのその小さな顔に浮かんでいる表情に、さらに驚く。

 自分そっくりのその顔に浮かぶのは、ただただ懺悔の色ばかり。

(なん、で……?)

 まるで冷水を浴びせかけられたかのように、全身が強張る。

 意味が分からない。

 どうしてクリスが謝るのだ。

 クリスには何一つ、非が無いというのに――。

「……――っ クリ、ス……?」

 ヴィヴィの唇が震えながら、その名を呼ぶ。

(どう、して……?

 どうして、クリスが、謝るの……? 

 悪いのは全部、ヴィヴィなのに。
 
 クリスにあんな言葉を吐かせてしまう原因を作った、ヴィヴィなのに――)

 ヴィヴィの顔が険しく強張る。

 そして焦ったように、ふるふると振られる金色の頭。

「く、クリスが、言った通り……、ヴィヴィ、汚らわしい、から――」

(なのに、どうして……、どうしてクリスが、謝っちゃうの……っ)

 ヴィヴィの灰色の瞳が、苦しそうに歪む。

 ふらりと立ち上がったヴィヴィは、クリスに向き直ると、深々と頭を下げた。

 長い金色の髪が、その小さな顔を覆い隠す。

 けれどそこから零れたのは、震えているがしっかり芯のある声。 

「ごめん、なさい……っ

 ごめんなさい……っ!!

 許して貰えると、思ってなんかいないけれど……。

 どうしてもこれだけは、クリスに謝らせて欲しい」

 ヴィヴィはそこで言葉を区切ると、顔を上げた。

 見ないといけないと思った。

 自分が傷つけたクリスの顔をちゃんと見て、胸に刻み付けなければと思った。

 もう、二度と同じ過ちを繰り返さない為に。

 自分の大切な人を、これ以上苦しめない為に。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ