この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章
ヴィヴィはテレビに向かって両手を掲げると、エネルギーを送る真似をしてみせる。
その可愛らしい仕草に吹き出した匠海が、妹を手招く。
「もちろん、精一杯気を送るよ。それに――手、出して?」
匠海が自分の右手を差し出して、ヴィヴィにも手を出すように催促する。
「な、なに?」
匠海の掌の上に自分のそれを差し出すのを、少し躊躇したヴィヴィがそう聞くと、右手をぐいっと引っ張られた。
「手、開いて?」
笑顔で促す匠海に、ヴィヴィはおずおずと掴まれたままの掌を開く。
そこにポンとオレンジ色の箱が置かれた。
5センチ四方の小さな箱。
「ラッキーチャーム。開けてみて?」
そう言って手を解いた匠海と箱とを見比べていたヴィヴィだったが、ゆっくりと箱を開く。
そこには、とても繊細で華奢な細工を施された、馬蹄型のチャームのネックレスが収まっていた。
「え…………これ……」
そう言って匠海を見上げたヴィヴィに、匠海が満面の笑顔で返す。
「随分遅くなったけれど、クリスマスプレゼント――あと、全日本フィギュアのお祝いも兼ねてる」
「―――っ!!」
まさかのプレゼントに、ヴィヴィは目を見開いて驚く。
そのまま絶句して固まってしまったヴィヴィに苦笑した匠海が、妹の手元を覗き込んだ。
「馬蹄モチーフのチャームは、古来ヨーロッパから幸運を呼ぶお守りなんだよ。ほらU字型だからここで幸運を一杯受け止めて、それを逃さないんだって」
「そう、なんだ……」
ヴィヴィも馬蹄モチーフのものは好きだった。
勿論匠海のおかげで慣れしたんだ乗馬に関連するものでもあるし、なによりヴィヴィからしたら「上質な大人のアクセサリー」のイメージだった。
「こんな上品で綺麗なネックレス……。ヴィヴィにはまだ、勿体ないよ……」
そう口では言いながらも心ので中は、愛している匠海からのプレゼントで、まるで天にも昇る幸せを感じていた。
「あれ、気に入らなかった? ハートとか可愛いほうが良かった?」
残念そうな顔をした匠海に、ヴィヴィは金髪が乱れるのも気にせず、ぶんぶんと大きく首を振って見せる。
「まさかっ 凄く気に入ってる! 素敵だし綺麗だし、幸運のお守でもあるなんて!」
大きな瞳を輝かせながらそう懸命に主張するヴィヴィに、匠海はほっとした表情を見せた。