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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章
「じゃあ、貰ってくれる?」
「ヴィ、ヴィヴィこそっ、貰っていいの?」
こんな上質なプレゼントを子供っぽい自分が貰っていいのか、まだ心配なヴィヴィが、小さく首を傾げる。
そんな妹の後頭部を、匠海が大きな掌でなでなでする。
「あたりまえだろ? ヴィヴィのために用意したんだから」
「―――っ!! ヴィヴィ、毎日着けるね。学校にも、リンクにも、試合にも!」
そう息せき切ってはしゃぐヴィヴィを、瞳を細めた匠海が見つめる。
「そう言うと思って、長さが調節できるようにしてあるよ。普段は短めに着けたほうが可愛いし、試合だと衣装に隠れる位長くなるから。それにゴールドだから錆びたりしないし」
ネックレスを妹から受け取り、チェーンの長さの調節を説明してくれた匠海だったが、ネックレスを持ったその手をヴィヴィの首の後ろへと伸ばした。
途端に距離が近くなり、ヴィヴィの鼓動が加速する。
ヴィヴィの目の上に匠海の出っ張った喉仏があり、息をする度に小さく上下をする。
その様子がなぜかとても艶めかしくて、でも目を逸らせなくて、ヴィヴィは徐々に自分の顔が火照るのが分かった。
ようやく身体を離した匠海が、ヴィヴィのことを一歩引いて見つめる。
「うん、よく似合ってる。綺麗だよ」
(………………?)
匠海の言葉の意味が咄嗟には理解できなかったヴィヴィだが、その視線の先が自分の首元にあるのを感じて視線を下す。
長めに止められた極細のチェーンの先、金色の馬蹄のチャームが繊細な輝きを放っていた。
「わぁ……可愛い」
人差し指の先で恐る恐る小さなチャームを弄ったヴィヴィは、みるみる満面の笑顔になる。
そして匠海を見上げて破願した。
「ありがとう、お兄ちゃん。ヴィヴィすっごく嬉しい!」
匠海が自分のことを考えながら、自分に似合う物を選んでプレゼントしてくれた――その事に言いようのない幸福を感じ、ヴィヴィは今までにないくらい満たされた笑顔を浮かべた。
「いい笑顔。その表情、ベラルーシでも見せてくれよ?」
指先でヴィヴィの頬をつんと突いた匠海が、現実へと引き戻す。
明後日には日本を発ち、今週末には大きな試合が待っている。
そしてこのネックレスは、その為のお守りでもあるのだ。
「うん。絶対、優勝するね!」