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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章
思いが強すぎて声にならず、ヴィヴィは苦しそうに、自分の顔を包むクリスの両手を握り締めた。
「……ち、がう……っ」
やっとそれだけの言葉を声として発したヴィヴィに、クリスはゆるゆると首を振った。
「違わないよ、ヴィヴィ……。
僕とヴィヴィは、切っても切れない……。
ずっと一緒だったんだ、
双子としてこの世に産まれ落ちる前から、ずっと――」
(なんで……? どうして……?
なんでクリスは、こんなにも自分を裏切り、苦しめるヴィヴィに、
優しくなんて出来るの……?)
ヴィヴィの震える瞳をうっとりと見つめるクリスの瞳は、どこまでも優しさに溢れていた。
「愛している……。
僕は例え、ヴィヴィが犯罪者になろうが、
世間に後ろ指を指される事をしようが、愛している」
クリスのその告白に、ヴィヴィは咽喉のつかえなんか無かったかの様に、叫んだ。
「なんでっ!? どうして優しくなんかするのっ!?
怒ってよっ
責めてよっ
兄妹なんかじゃないってっ
家族なんかじゃないってっ
恥知らずのお前なんか大嫌いだって、
ヴィヴィなんか、ぐちゃぐちゃにして、切り捨ててよっ!!」
居た堪れない。
そんな優しい瞳で、愛情に満ち溢れた表情で、甘やかす様な事を言わないで。
それよりも、口汚い言葉で罵られ、けなされたほうがどれだけマシか。
ヴィヴィは一気に捲し立てて息が切れ、そのままクリスを睨み付けるように見上げる。
「違うよ、ヴィヴィ……。
僕は優しくなんかない。
ただ僕には、ヴィヴィが必要だって分かったから、そう言っているだけ。
決して“ヴィヴィの為”に言っているんじゃない」
そこで言葉を区切ったクリスは、先ほどまでの優しい表情をすっと引っ込めた。
「僕はそんなに出来た人間じゃない。
僕にはヴィヴィが――君が必要なんだ。
どうしてだか、分かる……?」
ヴィヴィは咄嗟に首を振る。
昔のヴィヴィならいざ知らず、今の自分はクリスにとって何の価値もない、ただのお荷物、トカゲの尻尾、不良債権。