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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第75章
(優しい、優しいクリス。
貴方は本当に慈悲深い……。
生まれた時からずっと純粋で、いつまでも綺麗なままの、自分の双子の兄。
けれど、クリス……、
優しくする相手の事は、本当にそうするに相応しい相手かどうか、
ちゃんと見極めなければならないんだよ?
それを怠っては、寝入りばなに喉笛を食い千切られても、
決して文句は言えないんだからね――?)
ヴィヴィは深く息を吐き出すと、薄い唇を引き結ぶ。
細い指先をクリスの頬に添え、さわさわとその表層を辿る。
自分の双子の兄の手触りを、輪郭を、柔らかさを、硬さを確認し、記憶する。
そう、クリスは私の半身。
そこに恋愛感情は存在しないのに、それでもずっと永遠に傍に居たいと望む。
この世に生を受けた時からずっと、ずっと一緒の――。
「クリス……私もっ」
ヴィヴィは縋り付く様な瞳で、クリスを見つめる。
「私も、どんなクリスでも、受け入れる。愛してるっ
クリスがそれを、ヴィヴィに許してくれるなら――!」
必死にそう言い募るヴィヴィに、目前のクリスの瞳には、満足そうな色が浮かんだ。
双子はそれぞれの頬に手を添えながら、視線と吐息を交わす。
見つめ合う双子の顔は、ほんの10年前までは、見間違うほど瓜二つだったのに、今は完全に男と女の顔になっていた。
けれど、どれだけ容姿が変わろうと、体格差が出来ようと、芯の部分は変わらない。
ずっと、一緒。
ずうっと、一緒――。
「離さないよ、ヴィヴィ。
君は死ぬまで、いや……、
死んだ後もずっと、 “僕の片割れ” で、 “僕の可愛い妹” でいるんだ」
そう宣告したクリスは、ヴィヴィにも宣誓を促がす。
「いいね? ヴィクトリア――」
有無を言わさぬ瞳の強さに、ヴィヴィは惹き付けられ、求められるがままに誓った。
「はい。クリス、貴方の言う通りに――」
まるで心酔した様にそう返してきたヴィヴィに、クリスは心底満足そうに微笑んだ。