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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章               

 そう気合を入れて、匠海に最後の世界ジュニアでの優勝を誓ったヴィヴィだったが、はっと我に返る。

「あっ ヴィヴィ、お兄ちゃんにクリスマスプレゼント、用意してない……」

 自分だけ有頂天になり、重大なミスを犯していたことに今更ながらに気づき、ヴィヴィの顔からみるみる血の気が引いていく。

(あぁ~、ヴィヴィのバカ! だからいつまで経っても子供なんだよ~!)

 自分でそう突っ込み、しゅんと下を向いてしまったヴィヴィだったが、

「え? 貰ったよ?」

 匠海のその意外な一言で、すぐに顔を上げた。

「え? ウソ、何もあげてないよ?」

 まったく身に覚えのないことに、ヴィヴィはきょとんとする。

「何言ってんの。全日本ジュニアの連覇に全日本シニアの初優勝――それにグランプリジュニア ファイナルの連覇まであるぞ。それだけ沢山優勝して貰えれれば充分だって。こんな妹をもって、俺ほど幸せな兄貴は他にいないでしょ?」

 そう言われ、前髪の間からおでこを指先で突かれたヴィヴィは、

「そんなのじゃ、プレゼントにならないよ!」

 と、余りにも無欲なことを言う匠海に、わたわたと焦りながら反論する。

 しかし匠海は笑顔のまま首を振る。

「充分充分。それにクリスマスには熱烈なハグもして貰ったし」

「な゛っ!?」

 ヴィヴィは兄の言葉に、クリスマスの深夜の事を思い出し真っ赤になった。

 あの時は確かに匠海から抱きしめてきたが、ヴィヴィもその後 我を忘れて必死に縋り付き――。

 挙句の果てには試合の疲れがどっと押し寄せ、そのまま兄の腕の中で眠ってしまった。

「なっ、あ、あれは、お兄ちゃんが……っ」

 必死で言い訳しようとしたヴィヴィだったが、匠海が続けた言葉に更に熟れた林檎の様に、耳まで真っ赤になった。

「じゃあ、もう1回、ヴィヴィからハグして? そしたらそれを本当の俺へのクリスマスプレゼントとして、受け取るから」

「―――っ!?」

 信じられない提案に絶句したヴィヴィを、匠海が面白そうに見下ろしてくる。

 その瞳は突然思いついた悪巧みで、イキイキして見えた。

(もうっ 絶対、ヴィヴィで遊んでるっ!!)

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