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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章           

「やっぱり、知らなかったのか」

 そう言って困ったような表情をしたアレックスに、ヴィヴィは詰め寄る。

「い、いいいいっ いつから――っ!?」

(クリスが女子と、おっ、お付き合いを~~っ!?)

「さっき」

「さっき……? ―――っ はぁああ~~っ!?」

 自分が席を外したたった数分で、なんでそんな大事件が起こっているんだと、ヴィヴィは驚嘆する。

「さっき、廊下でリサが『付き合って下さい』って告ってきて、クリスが『いいよ……』って答えて」

「……はあ……。そうなんだ……」

(あらやだ、クリスさんたら……。オモテになること……)

 そう頭の中で団地の主婦の様な感想を述べたヴィヴィは、その視界の端、暗い表情で教室を出ていくカレンに気づく。

「あっ! ヴィヴィ、ランチ行ってくる!」

 突然思い出したようにそう発したヴィヴィは、自分のランチボックスを机に取りに戻る。

「え? ああ、うん……」

 周りにいたクラスメイト達が、ぽかんとヴィヴィを見つめる中、

「じゃあね~っ!!」

 元気にそう言って、教室から飛び出して行ったヴィヴィに、

「ヴィヴィ、クリスに彼女出来ても、拗ねたりしないんだね……」

「ちょっと、意外……?」

 残されたクラスメイト達が、そう囁き合ったのは、本人達の知るところではない。









「カレンっ!」

 ヴィヴィはダッシュで階段を駆け下りながら、その先を歩いていたカレンの後ろ姿に声を掛ける。

 びくりと肩を震わせたカレンは、驚いたようにヴィヴィを振り向いた。

「え……、ヴィヴィ……?」

「カレン、ランチ、一緒に食べない?」 

 そう言って目の前に自分のランチボックスをかざしたヴィヴィは、当惑した表情のカレンににこりと笑い掛ける。

「え……、ら、ランチ……?」

「あ、カレンも、ランチボックス持ってるね! ちょっと話したいことあるから、そうだな……家庭科室、行こう?」

「……え……? あ、うん……」

 そう一応了承してくれたカレンの手を握ったヴィヴィは、隣校舎の家庭科室へと向かった。

「あ~、ちょっと寒いな~」

 家庭科室に入った途端、ヴィヴィが紺のニットに包まれた、華奢な肩を震わせる。

「……暖房、入れる?」

 カレンが壁の空調パネルを指し示して、尋ねてくる。

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