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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
「そうだね。生徒が風邪ひくよりは、暖房代のほうが安いでしょ~」
そう言ってにかっと笑ったヴィヴィは、手近な6人用の大きなデスクにランチボックスを置き、椅子に座る。
「えっと、話長くなりそうだから、先食べちゃっていい? ヴィヴィ、料理長と約束したんだ『絶対残さない』って」
「う、うん。いいよ」
一人で話を進めていくヴィヴィに、カレンはどもりながら頷く。
「じゃあ、いただきま~す! お腹空いた~っ」
両手を合わせたヴィヴィは、ランチボックスの中身の可愛らしさに、瞳を輝かせながら食べ始めた。
「いただき、ます……」
静かに向かいの席で食べ始めたカレンに、ヴィヴィは微笑む。
当たり障りのない話をしながら食事を終えた頃には、二人は昨日以前の、元通りの親友に戻ったように笑っていた。
ランチボックスを片付け、居住まいを正したヴィヴィは、やっと真剣な表情を浮かべて口を開く。
「あのね、カレン。昨日の事なんだけど――」
カレンはそう言うヴィヴィを遮って、ぺこりと金色の頭を下げた。
「ごめん……っ、本当にごめんっ
私、自分が辛くて……っ それでヴィヴィに当たり散らしただけだった。
ヴィヴィだって辛い時だったのに。本当に、ごめんなさい……っ」
親友のその謝罪に、ヴィヴィは驚いて目を丸くする。
(『自分が辛くて』……? カレン、何があったの?
昨日も朝から、ずっと元気なかった……)
ヴィヴィの頭の中に、そう疑問が湧いたが、それよりも先に自分が謝らねばと思い、まだ頭を下げ続けるカレンの肩をそっと抱いて起こした。
後悔の念に苛まれた様に青い瞳を揺らすカレンに、ヴィヴィはふるふると頭を振る。
「違うよ、カレン……。当り散らしてなんか、ない。
ヴィヴィが言ったことは、本当に酷い事――。
そして、ヴィヴィ、まだ同じこと思ってるもん……。
ごめんね、馬鹿な子で……。自分でも分かってる」
『自分が好きじゃない人から、気持ちを伝えられても、嬉しくないの』
昨日口にしてしまった、自分の本音。
(ヴィヴィ、自分の事だけに精いっぱいで、周りが見えなくなってる――)
「ヴィヴィは、馬鹿なんかじゃ無いよ……」
カレンも小さく頭を振り、ヴィヴィを必死に見つめてくる。