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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
「あれ、そっち、15時……?」
第一声そう言ったヴィヴィは、白いマントルピースの上の時計を振り返る。
『ああ。今、講義の合間の休憩中。ヴィクトリア、そろそろ寝る頃かと思って』
帰ってきた声は、懐かしい匠海のもの。
「うん。あ、実は、ヴィヴィも電話したかったんだ、ちょうど1時間前……」
『お? じゃあ、俺、超絶空気読める人?』
そう楽しそうに返す匠海に、ヴィヴィの唇から笑い声が漏れる。
「ふふっ そうだね。声が聞けて、嬉しいっ」
(まさか、お兄ちゃんのほうから電話を掛けてきてくれるなんて、思いもしなった……)
そう言って、にんまりしたヴィヴィに匠海が笑う。
『素直で可愛いヴィクトリア。お前の顔を見たいんだけど、スカイプにしない?』
匠海のその言葉に、ヴィヴィの胸がまたとくりと鳴る。
「……ヴィヴィの顔、見たいの……?」
『とっっっても、見たい』
そう答えた匠海の言葉に、ヴィヴィは破顔する。
「ヴィヴィも! じゃあ、一旦切って、ヴィヴィ、PCから電話するね! 大画面でお兄ちゃんの顔見たいから」
『はは、いいよ。じゃあね』
ヴィヴィもスマホを切ると、書斎にダッシュして、スカイプを繋げる。
「わあ、大学だ~! かっこいい~っ!!」
匠海が画面に映った途端、本人よりも後ろに広がる光景にそう感嘆したヴィヴィに、兄は不服そうに返してくる。
『俺じゃないのかよ……』
「あ……っ え、えっと、照れてるだけだから、あははっ」
そう言って乾かしたばかりの髪を、わしゃわしゃ掻きながらごまかしたヴィヴィに、兄は苦笑する。
(だって、お兄ちゃんがどういうところで生活しているか、凄く気になるの……)
『お風呂上りなんだな。ほっぺがピンク色で可愛いよ』
「むぅ……。子供っぽいって、思ってるんでしょ?」
ピンク色と言われた頬を、膨らませて見せたヴィヴィに、
『違うよ。今すぐ抱き締めて、その香りを確かめたいくらい、色っぽい』
そう返してきた匠海の灰色の瞳には、明らかに欲情した色が浮かんでいた。
「……――っ だ、大学で、何言ってるの~っ!?」
(しかもそっち、昼の15時だよ? だ、誰かに聞かれたらっ)