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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
『お前の、アリス。本当にハマりプロだよな』
「本当? エディンバラの従姉妹には『お子ちゃま』って言われまくったのに……とほほ」
そううな垂れてみせるヴィヴィに、匠海が笑う。
『だからいいんじゃないか。ヴィクトリアの内面を表現してて』
「なにお~っ!? ヴィヴィ、大人になりつつあるもんっ」
デスクをぺちぺち叩きながら、そう主張するヴィヴィ。
(なりつつある……かな? う~ん……)
内心首を傾げたヴィヴィを見破ったように、匠海が適当な返事を返してくる。
『はいはい。可愛いかわいい』
「もぉ~~っ!!」
ヴィヴィが子供っぽく頬を膨らませた時、匠海の電話の向こうから、チャイムが鳴ったのが聞こえた。
『じゃあな。そろそろ、講義始まる』
「あ、うん。あ、ありがとう、電話してくれて」
ヴィヴィはそう礼を言うと、嬉しそうに微笑んだ。
『ああ。おやすみ、ヴィクトリア』
手を小さく振りながら、そう就寝の挨拶をくれる匠海がなんだか可愛らしくて、ヴィヴィは心からの笑顔で答えた。
「おやすみなさい」
途切れた画像を見つめながら、ヴィヴィはそのままぼうとしていた。
「………………」
(お兄ちゃんが1月4日に渡英してから、今日まで10日間。
ヴィヴィ、色んな事があった。
クリスを怒らせてしまったり、許して貰ったり。
親友のカレンと初めて喧嘩したり。
生まれて初めて、男の人に告白されたり――)
「……どういう反応、したかな……?」
ヴィヴィは灰色の瞳で、何も映さない画面を見続けたまま、ぼそりと呟く。
(ヴィヴィが男子に告白されたって言ったら、
お兄ちゃん、どんな反応をしただろう……?)
焼きもちを焼いてくれる?
『俺のもの』なのにって、怒ってくれる?
「告白されるなんて、成長したんだな」と喜ぶ?
それとも、なんとも思わない――?
「………………」
(気持ちを伝えてくれた皆の、一方通行の気持ちが嫌って程分かるから、
お兄ちゃんにその事を言う気は、全く無いけれど。
それとは別に、お兄ちゃんの反応が怖くて、言えない……。
「そう」って流されそうで、
「だから?」って聴き返されそうで、
自分に興味無いんだなって、そう思っちゃいそうで、怖い……)