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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章           

 1月19日(土)・20日(日)。

 センター試験の同日に「センター同日」とそのままの名前の、予備校の模擬試験を受けた双子は、その翌日の月曜日に登校していたが、その明暗はくっきり分かれていた。

「ヴィヴィが、死んでる……」

「死んでるね……」

 ランチタイム。

 そう囁きあうクラスメイトの視線の先、自分の机で虚ろな瞳でぼへ~と脱力しているヴィヴィがいた。

(あ~~。やっぱりここんとこ、バタバタしてたから、勉強してても集中出来てなかったんだろうな……)





 昨日、模試の自己採点をし、その余りにも低い点数に、ヴィヴィ本人もクリスもかなり戸惑った。

「あ゛あ゛……っ 来年の今、センター受けてるなんて、想像できないっ!!」

 頭を抱えながら書斎でそう叫ぶヴィヴィに、

「大丈夫。僕を信じて、一緒に頑張ろう……? ちゃんと今回間違ったところ、復習しようね……」

 クリスはそう優しく妹を諭すと、早速間違ったところの応用問題を作ってくれる。

「クリス……。なんでそんなに、優しいの……? ヴィヴィ、そこまでして貰えるような、人間じゃ――」

 落ち込んでぼそぼそと呟くヴィヴィの言葉を遮るように、クリスが妹のその細い体を胸に抱きしめてあやす。

「馬鹿……。ヴィヴィは僕の可愛い妹。それだけで充分、優しくする理由になる……」

「いや……。なんかそれだと、甘やかされてるだけ、の様な気が……」

 クリスの腕の中でそう不審げに呟いたヴィヴィの視線の先、リビングにいる朝比奈が、双子を困ったように見守っている。

「まあ実際、甘やかしてるからね……」

「えぇ~~……。ヴィヴィ、ろくな人間にならないよ」

 そう言って遠い目をしたヴィヴィは、クリスから抱擁を解かれた。

「まあ、どんなヴィヴィでも、僕は愛しているから……」

 無表情でそんな甘い言葉を囁きながらも、自分そっくりの灰色の瞳の中には、紛れもない愛情が宿っているから、たちが悪い。

「………………」

(わぁ……。一見凄く深い愛に見えるけど、途轍もなく無責任~っ!)

 ヴィヴィは心の中でそう叫ぶと、再度頭を抱えた。



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