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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
昨晩のクリスとのやり取りを思い出しながら、ヴィヴィは教室の自分の席で、ふうと息を吐き出す。
(ああ、ダメダメ。クリスがいっぱい助けてくれてるのに、弱音なんか吐いてちゃダメだっ! 世の中には受験生がごまんといるの。ヴィヴィだけしんどいんじゃないんだからっ)
ヴィヴィはそう自分を奮い立たせると、次の教科のテキスト類をロッカーに取りに行こうと立ち上がる。
「あれ、そう言えば……」
そこでふと足を止めたヴィヴィは、前の席のクリスに話しかける。
「最近、リサ、見ないね?」
リサ――つまり1学年下のクリスの彼女は、付き合い始めた当初、休み時間の度にこの教室へ遊びに来ていたが、ここ数日目にしていない。
眠そうにあくびをしていたクリスは、ちらりとこちらを振り返り、口を開く。
「ああ、4日前、別れた……」
「ふうん」
ヴィヴィはそう相槌を返しながら、廊下のロッカーへと向かい、教室の真ん中で足を止める。
(……ん? わか、れた……? 別れた……?)
「「「「―――てっ えぇええええっ!?」」」」
その場にいたクラスメイト19名が、一斉にクリスに向かってそう叫ぶ。
五月蠅そうに顔をしかめたクリスは、なんでそんなことで驚くのか分からないといった表情で皆を見回す。
クリスのその様子に、余計みんなが固まっていると、
「あ、あの――」
教室の入り口に一人の女生徒が現れ、その近くにいたケイトに要件を伝える。
「クリス~、お客さんだよ」
ケイトにそう呼ばれ、クリスは「うん……」と答えると、ひょうひょうと教室を出て行った。
生徒の半数が、廊下と教室を隔てる半透明のガラスにへばり付き、クリスとその女子との会話を、耳をダンボにしながら盗聴し、もう半数の生徒は、ヴィヴィへとにじり寄ってきた。
「ヴィヴィ、ど、どうなってんのさ……っ?」
マイクがどもりながら発したその問いに、周りの生徒がうんうんと頷いて同調する。
「し、知らないよぉっ ヴィヴィだって、今、聞いたとこだもんっ!」
(こっちが聞きたいよ~っ!!)