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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第14章
匠海はきっと、兄離れしようとしている妹があたふたしているの、を見るのが楽しくてしょうがないのだ。
だからいつもからかう様な真似をしてくる。
「お兄ちゃんの……っ」
そう大声を出したヴィヴィは、20cm以上背の高い匠海に ボスという音を立てて飛びついた。
七分袖のワンピから伸びた細長い腕をひしと匠海の背中に回すと、これでもかというほど強い力を込めて締め上げた。
少しは苦しがるかと思ったが、匠海は平然として聞き返す。
「俺が、何――?」
その声は余裕綽々で、ヴィヴィは自分でも子供っぽいなと思いながらも、更にむきになって喚いた。
「お兄ちゃんの、意地悪――っ!! 20歳なのに大人げないっ!! もう、ヴィヴィ、お兄ちゃんのことなんか――」
勢いづいてそこまで喚いたヴィヴィの鼻腔を、匠海自身の爽やかな香りがくすぐった途端。
ワンピに包まれた薄い胸がきゅうと疼いた。
自分でも何故だか解らないが、急に目頭が熱くなり咽喉が苦しくなる。
(お兄ちゃんなんか、天邪鬼(あまのじゃく)なのに……。お兄ちゃんなんか、ヴィヴィをからかってばっかりなのに……なのに――)
「好き――大好き……」
匠海の薄手のニットに顔を埋めて、ヴィヴィは掠れた声で小さく小さく囁く。
自分の囁きが、兄の鼓膜を震わせないことを願いながら――。
その願い通り匠海は聞こえなかったようだ。
兄は急にトーンダウンした妹の頭を片手で優しく撫でていたが、その内もう片方の手がそっとヴィヴィの小さな背中に回され、ギュッと抱き締めてきた。
匠海の胸にすっぽり収まって、身も心も預けてしまえるのが心地よかった。
高鳴る胸は若干、五月蠅いけれど。