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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
何故か自分に寄って来るクラスメイト達に、両手を胸の前でかざしながら、後ずさりするヴィヴィの背中が、トンと誰かにぶつかった。
「あっ ごめんっ」
そう詫びながら振り返った先にいたのは、カレンだった。
「ん、大丈夫……」
そう言って笑ったカレンの表情がどこか不自然で、ヴィヴィは覗き込む。
「カレン……? どうし――」
「おい、クリス! 今のって、3年のヘレンだよな? あの、美女と名高いっ!」
ヴィヴィの声をかき消すような大声でそう叫んだマイクに、クリスが首を傾げる。
「……有名人、なの……? 知らなかった……」
「知らないのはクリスだけっ! この学園のアイドル! 高嶺の花!」
エドガーがそう叫ぶのを、無表情に見ていたクリスは、なぜかくるりとこちらを振り返った。
「ヴィヴィ、知ってた……?」
「えっと、一応、顔くらいは……?」
(黒髪がとても素敵で、確か両親のどちらかが中東の方で、目鼻立ちはっきりした美人さん、というくらい……?)
「学園のアイドル……? ヴィヴィ、じゃなくて……?」
何故か不服そうにそう聞き返すクリスに、クラスメイトが一様に首をひねる。
「ヴィヴィ? ん~、ヴィヴィはアイドルじゃなくて、マスコット的な?」
「ゆるキャラ的な?」
「みんなのおもちゃ的な?」
その散々なクラスメイトの評価に、ヴィヴィが絶句する。
「……――っ ちょ~~っ 待ていっ! 何を人のこと勝手に~っ」
(誰がおもちゃだっ!!)
そう叫びながら両手を振りかざすヴィヴィはさて置き、皆がクリスに注目する。
「で……、つ、付き合うのか? ヘレン先輩と」
「うん、一応……?」
小さく首を傾げたクリスに、皆が互いの顔を見合す。
「そうか……。まあ、美少年・美女で、お似合いかも?」
「確かに。この学園でヘレンに釣り合うのは、クリスくらいかもな?」
そう男子が囁き合えば、
「しっかし、モテるね~」
「うちらは同学年で同じ教室で、ず~~っとクリスのシスコンぶり見てきたから、もうクリスは恋愛対象に入ってないけど」
「ね~。まあ確かに、かっこいいし、可愛いし?」
「性格もいいし~? 寡黙だけど、普通に話してくれるし~?」
女子はそう口々に言いたい放題だ。