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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
ヴィヴィは取りあえずロッカーにテキストを取りに行こうとして、はっと後ろを振り返るが、先程までそこにいたカレンはいなかった。
「………………?」
不思議に思いながらもテキストを取って戻ったヴィヴィは、自分の席の目の前のクリスを見つめる。
「そっか。新しい彼女か~。良かったね?」
ヴィヴィのその祝福の言葉に、クリスが頷く。
「『メール魔』じゃないって、言うから……」
「……――っ そこですかっ!?」
思わずそう突っ込んでしまったヴィヴィを、事情を知らないクラスメイトが不思議そうに見つめてくる。
「はは、あははは……っ」
そう笑って誤魔化したヴィヴィは、困ったように天を――いや、天井を仰ぐ。
(リサって、確かに『メール魔』だったかも知れないけど、普通のいい子だったよね? 結構礼儀正しくて、ちゃんと私達にも挨拶してくれて、明るくて、というか、きゃっきゃしてて……)
ふわふわのブルネット(栗毛)が印象的な、幼い顔立ちのリサを思い浮かべ、ヴィヴィは内心首をひねった。
(まあ、クリスは頭いいし、思慮深いし、……色々考えてるんだよね? ちゃんと、クリスの中に理由があってそうしてるんだったら、ヴィヴィ、見守ろう……)
そう思ったヴィヴィは、まだランチタイム終了まで時間があるのを確認し、iPadを開く。
昨日、双子HP用の自分の日記の記事を、メールで牧野マネージャーに送ったのだ。
(遅くなったけど、スターズ・オン・アイスの写真と、頂いたお花の写真、載せたかったし……)
双子のHPを開き、自分の記事に間違いがないか確認し終えると、クリス‘S DIARLYも更新されているのに気付いた。
「あ……、クリスのHP、更新されてる」
思わず呟いたヴィヴィに、まだ近くにいたジェシカがiPadを覗き込んでくる。
「見せて~みせて~? ……何、これ……?」
そう困惑気味の声を上げたジェシカに、ヴィヴィも覗き込む。
「あ~~っ!! クリス、これっ!」
そう叫んだヴィヴィは、クリスにその画面を向ける。
そこに表示されていたのは、クリスが寝込んだ時にヴィヴィが描いた『FP・牧神の午後 を踊るクリスの図』の画像だった。