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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章
2月6日~8日。
台北で行われた四大陸選手権2020から帰国した双子は、羽田空港でマスコミとファンに囲まれていた。
双子は受験生でもあり、もう受験まで一年を切っている。
そのため今後余程のことがない限り、受験が終わるまで記者会見や、テレビへの露出は控えたいとの旨を、日本スケート連盟を通じて通達したにも関わらず、各社の記者が押しかけていた。
何故なら――、
「ヴィクトリア選手! 四大陸の結果を受けて、一言お願いします!」
「あの、FPの点数、どう思われていますか? 一部関係者からは、低すぎるとの声がありますが?」
「あと1ヶ月後に世界選手権が控えていますが、修正はどのように行うつもりですか?」
「ロシアのスケート協会の、ロビー活動のせいという意見もありますが?」
「ヴィクトリア選手っ! FP3位というのは初めてですね? 今の心境をお願いしますっ」
そう、全てのマスコミが“格好のネタ”になると思っているのは、ヴィヴィのFPでの失態だった。
「皆様、篠宮両選手は受験の終わる来年3月まで、取材等は自粛する旨、各社に通達を出しています。冷静に対応して下さい」
牧野マネージャーがそう言って、一切の取材には応じないと伝えても、その場は収拾がつかなさそうなほど殺気立っていた。
それだけ、これまで双子揃って男女シングルの不動の1位を守り抜いていたという事は、偉業だったのだろうが、ヴィヴィはどうしても、心の底で思ってしまう。
(ぶっちゃけ……、ヴィヴィが不調のほうが、マスコミも騒ぐし、ニュースに取り上げられたりで、フィギュア界の注目度も上がったり……。なんだろう……ヴィヴィ、嫌われてるのかな……)
そう思ってしまうと、どうしても視線が下がり、俯いてしまう。
撮影用の暑ささえ感じるライトや、カメラのフラッシュまでもが、自分を責め立てている様な気になってしまう。
「………………」
空港職員やスケ連関係者に守られて移動しながら、ヴィヴィは意識して顔を上げる。