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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章           

 フィギュアの採点は、技術点+構成点+ディダクション(減点)によって付けられる。

 今回の四大陸選手権で問題となったFPは、この中でも構成点(プログラムコンポーネンツ)の点数があまりにも悪かった。

 構成点の内訳は、スケート技術、要素のつなぎ、動作/身のこなし、振り付け/構成、曲の解釈の5つ。

 このうち、振り付け/構成以外の4つが、通常のヴィヴィなら8点台後半なのに対し、四大陸のFPでは6点台に。

 それに引きずられる様に、ミスなく熟した筈の技術点のGOE(出来栄え点)まで下がっていた。
 
 よって今までの諸大会のFPの点数より、約20点も低い点数を付けられたヴィヴィは、SP1位、FP3位。

 そして周りの選手の出来が宜しくなかった事もあり、なんとか総合1位を守り抜いたという有り様だった。

 ただマスコミからしたら、ジャンプは一つのミスも無く、スピンでふらついたり、ステップで転倒したり、という目立って分かりやすいミスが無かったのにも関わらず、20点も減点された理由が腑に落ちないらしい。

 だから、ヴィヴィの一番のライバルであるロシア人選手達を抱える、ロシアのスケート協会が「ロビー活動で日本選手の点数を下げるよう画策した」等という根も葉もない噂が出てしまったらしい。

 帰国して早々、持たれたチームのミーティングでは、FPの映像を見返して問題点の洗い出しと今後の対策、メンタルトレーニングの導入等の事項が検討されていた。

 サブコーチの、直前練習を想定しての日頃の練習の徹底の改善策や、柿田トレーナーのメンタルトレーニングの説明等、チームの皆が懸命に自分の為に話し合ってくれているのに、ヴィヴィの心はこことは違うところにあった。

「………………」

(なんで、出来なかったんだろう……。

 お兄ちゃんの幸運のお守りもあるし、

 技術的にはほぼ完璧に近いベストコンディション、

 直前に何かトラブルがあった訳でも無く……。

 なのにどうして、オーロラ姫になりきれなかったんだろう……。

 ヴィヴィ、役になりきるのは得意、なのに……)
 
 ヴィヴィは、FPの試合直後から何度も自問自答している事を再考し、途方に暮れて俯く。

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