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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第76章           

「そっか。僕もやろうかな……?」

 クリスはそう言いながら、体幹を使って腹筋しながら、ヴィヴィにボールを投げ返してくる。

 3キロもあるので結構重い。

「クリスは、凄いじゃない……。もう、彼女と別れた2日後の人の演技じゃなかったよ、あれは」

 そう、クリスは2人目の彼女、3年生のヘレンと別れてしまった。

 理由は聞いていない。

 そして、当然のようにSP1位、FP1位の総合1位。

「そう……?」

 ヴィヴィが投げ返したボールを、またクリスが投げ返してくる。

「うん。特にFPの『牧神の午後』……。ヴィヴィ、リンクサイドで見てて、すっごい鳥肌立ったもん。なんか、『凄っ!!』って!」

 ボールを胸に抱え込んだヴィヴィは、ワザとぶるぶると体を震わせて見せる。

「凄い……?」

「そう、うん! なんか色気倍増というか、大人っぽくなったというか……。クリス、一人でどんどん大人になってっちゃう~」

 唇を尖らせながらそう言ったヴィヴィは、少し強めにボールを投げてやる。

「そんな事無いよ……、まだまだ“ガキ”だよ……」

 見事キャッチしながら、一瞬視線を逸らしたクリスは、そう言って肩を竦めた。

「そう?」

「うん……」

「じゃあ、ヴィヴィと、一緒だね?」

 そう言って首を傾げたヴィヴィに、クリスが瞳を細める。

「だね……。ヴィヴィと一緒なら、何でもいいや……」

「あはは。ヴィヴィもっ」

 クリスのその可愛らしい言い草に、思わず噴き出したヴィヴィに、

「笑った……」

 そう言って、体を起こしたクリス。

 ヴィヴィはにこりと心から笑うと、クリスの首に腕を回して抱き着く。

「クリス、好きっ!」

「僕も」

 妹を片腕で抱き寄せて、ぽんぽんとその背を叩くクリスに、

「ケンカしてたと思ったら、前以上にラブラブになったな?」

 近くのマシンで筋トレをしていたペアの成田達樹が、呆れたように突っ込んでくる。

「うふふ。だって、ヴィヴィ達、双子だも~んっ」

「だも~ん……」

 ヴィヴィの語尾を真似て、でも無表情に続けるクリスに、達樹が脱力する。

「はいはい。ご馳走様でした~」

 双子に向かって合掌して見せた達樹に、ヴィヴィは満面の笑みで、クリスは瞳だけで微笑んだのだった。






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