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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章
「お嬢様……。そんな事を悩んでらっしゃったのですか……」
朝比奈が心底驚いた表情で、ヴィヴィを見つめてくる。
「う、うん……。あっ! でも、これ、秘密ね? 朝比奈とヴィヴィだけの」
さすがに恥ずかしくて、慌ててそう口止めしたヴィヴィに、朝比奈は恭しく頷いた。
「勿論です。嬉しいですよ、お話して頂けて。では、私からも一つ――」
「………………?」
「お嬢様が嫌いだと思われている “お嬢様ご自身” ですが、私は大好きですよ?」
朝比奈はスーツの前で両手を組むと、ヴィヴィにそう語りかける。
「え……?」
「お嬢様は礼儀正しくて、誰にでもちゃんとご挨拶もお礼も出来ます。サービス精神が旺盛で、常に周りを楽しませようと無自覚でされています。努力家で有言実行の人です。周りからご自分に求められる役割を察知する勘が鋭く、常にそれに応えようと努力されます。まだまだ沢山ありますが、取りあえずこの位で」
そうすらすらと淀みなく、自分の主の好きなところを挙げた朝比奈に、ヴィヴィは驚いて灰色の瞳を見開いた。
「あ、朝比奈……?」
「人間というものは、自分の良さを見つけるのが不得手な生き物です。でもきちんと皆、良い所があるのですよ」
そう締め括った朝比奈は、自信満々に頷いて見せた。
「……――っ ありがとう……」
ヴィヴィは今更ながらに恥ずかしくなって、熱くなった頬に両手を添えた。
「これから毎日、お伝えしましょうね。私がお嬢様の大好きなところ」
「え……っ!? いい、いいよっ!」
朝比奈のその驚きの申し出に、ヴィヴィは驚いて断った。
(こ、こっぱずかし過ぎるっ 自分の執事に、自分の好きなところを毎日言わせるだなんてっ!)
「そうですか? まだまだ一杯ありますのに。残念です」
そう言った朝比奈は、本当に心底残念そうに嘆息した。
ハーブティーを飲み終わったヴィヴィからティーセットを下げた朝比奈は、改まってヴィヴィに向き直った。
「でも、私がお嬢様の中で一番お慕いしているところは、その “可愛らしさ” でしょうかね?」
「か、可愛らしさ……?」
ヴィヴィは不思議そうに首を傾げる。