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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章
「ええ。楽しそうに声を上げて笑われる笑顔、はにかまれる微笑み、恥ずかしそうに頬を染めるお顔、小動物の様な愛嬌のある仕草、悪戯を企んでおらる時のしたり顔、年相応の言動に、素直なご性格――その全てがお可愛らしいです」
そう言ってうっとりと銀縁眼鏡の奥の瞳を細めた執事に、ヴィヴィは絶句した。
「―――っ は、恥ずかしいこと言わないで~っ!」
もはやただの “執事馬鹿” 以外の何物でもない朝比奈に、ヴィヴィは悲鳴を上げるようにそう発した。
「恥ずかしがり屋なところも、お可愛らしいですよ。では、お嬢様、おやすみなさいませ」
「お、おやすみなさい……っ」
静かに退室した朝比奈の姿が消え、ヴィヴィはがくりとソファーに手を付いた。
照れることをさんざん言われ、顔から火が出そうなほど熱い。
ぱたぱたと手で顔を扇いでいたヴィヴィは、ふとその手を止めた。
「………………」
(そういえば、お兄ちゃん、よく「可愛いい」って言ってくれる……。
ヴィヴィ、あんまりお兄ちゃんのこと、そういうふうに褒めてないな……。
もっと口にするようにしよう、ちゃんと心の中でそう思ってるんだから。
でもお兄ちゃんの「可愛いい」って、ほ、本当なのかな……?
ううん……、本当って、思いたい……。
お兄ちゃん、ヴィヴィのそこだけでも、好きになってくれてるといいな……)
そう頭の中で思ったヴィヴィは、ふぅと息を吐くとゆっくりとソファーから立ち上がり、寝室へと消えていった。
2月半ば、双子は『センター本番』という予備校の模試を受けた。
「これ見て。1月に受けた『センター同日』、ここでちょうどセンター試験本番の1年前で、中間目標点を取っておかなければならなかった……」
クリスが勉強スケジュールの表を、ヴィヴィに見せてくる。
「ヴィヴィ、取れなかったもんね……」
ヴィヴィは先月受けた模試の散々な結果を思い出し、華奢な肩を竦める。
「まあ、ヴィヴィの中間目標点、僕が高めに設定しすぎたのもある……。で、今回受けたのが第1回『センター本番』。これは第5回まであって、第1回~第3回で弱点を把握しながら実力アップを目指すと」