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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章
防音室から出たヴィヴィは、1階の長い廊下を抜け玄関ホールに差し掛かり、そこで歩を止めた。
「あ、れ……、ローラ……?」
玄関ホールに据え置かれたソファーに腰を下ろしていたのは、クリスの新しい彼女――ローラだった。
ヴィヴィの声にローラが立ち上がり、こちらを振り返ってくる。
金色の美しい巻き毛に、緑色の綺麗な瞳、可愛らしい顔は童顔だが高等部1年なのだから当たり前か。
その傍には双子の執事・朝比奈が控えているので、間違いなくクリスに会いにここへ訪ねて来たのであろう。
ヴィヴィは咄嗟に腕時計で時間を確認し、首をひねる。
「ローラ、遊びに来てたんだ? けれど、こんな遅くまで大丈夫? もう1時だよ?」
「お、お邪魔していますっ ヴィクトリア先輩。えっと、あの、家に連絡はしいてるので……。む、迎えの車も、もうそこまで来ていますし……」
何故か焦ったようにどもりながら答えるローラに、ヴィヴィは内心「どうしたんだろ?」と不思議に思う。
「そうなんだ。しかし、クリスったら! お客様のお見送りもしないで」
そう当惑して呟くヴィヴィに、朝比奈も「申し訳ありません」とローラに謝る。
「あ、大丈夫ですっ く、クリス先輩、寝ているので……」
ローラは恐縮して、体の前で小さく両手を振った。
「寝てる……? 彼女ほっぽいて?」
ヴィヴィが、眉根を寄せてそう続けたが、ちょうどローラの家から迎えの車が到着した。
「えっとっ し、失礼しますっ!!」
そう言ってぺこりとお辞儀をしたローラに、ヴィヴィは面食らう。
「え? う、うん。じゃあ、また遊びに来てね~」
小さく手を振ってクリスの彼女を見送ったヴィヴィは、ローラを乗せた車が見えなくなると、腑に落ちない表情で朝比奈を振り返る。
「お嬢様、そろそろお休みになりませんと。明日もお早いですよ?」
そう何事も無かった様にヴィヴィに就寝を促す朝比奈に、ヴィヴィは「う、うん……」とあいまいな返事を返し、3階への階段を昇り始める。
(あれ……? ヴィヴィ、クリスと22時まで勉強してたよね? じゃあ、ローラ、それ以降にうちに来たってこと?)