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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章              

 ヴィヴィは不思議に思ったが、すぐににこりと微笑んだ。

(そっか……。クリス、今シーズン中だし受験生だし、……ヴィヴィの勉強も見てるし。で、忙しくて休日に彼女と会えないのが寂しかったんだ。それで少ない時間でも、わざわざ会いに来て貰ったんだね? ひゃあ~っ 羨ましいぞっ)

 しかしそれならなおさら、そんな遅くに来てくれた彼女に対して、見送りもしないとは何事か。

 ヴィヴィは3階へ辿り着くと、クリスのリビングへの扉をノックした。

 2回繰り返したが返事がなく、ヴィヴィは扉を開ける。

 紺色で統一されたリビングには煌々と明かりが点り、その奥の書斎にも電気が付いている。

「ク~リ~ス~? 駄目じゃん。彼女見送ってあげなきゃ~」

 ヴィヴィは明るい声でクリスをからかいながら、リビングを横切り書斎を覗く。

「……って、あれ……、いない……?」

 つけっぱなしの照明を消したヴィヴィは、首を捻りながら書斎の隣の寝室へと向かう。

 その扉はほんの少しだけ開いていて、ヴィヴィはそのノブを掴むと扉を開いた。

「クリス? ……なんだ、本当に寝て――」

 ヴィヴィの明るい声が、そこで途切れた。

 そして、何故か静かに扉を閉めると、そそくさと自分の私室へと繋がる扉をくぐり、それを後ろ手に閉めた。

「……~~っ」

 無言で悶絶したヴィヴィの顔は、熟れ過ぎたトマトの如く真っかっか。

(……っ えぇえええ~~っ!?)

 ヴィヴィは頭の中で絶叫すると、ふらふらとリビングの白いソファーへと歩み寄り、そこに腰を下ろした。

 何故かそこでしばらくぼ~っとしたヴィヴィは、びくりと体を震わせて正気に戻る。

 先ほどクリスの寝室で目にしてしまったものを思い出し、さらに顔が火照る。

(そ、そういうことか……。ヴィヴィ、どんだけ鈍感……orz)

 今頃になって、ローラの様子がおかしかった理由が分かる。

 薄暗い寝室のベッドの上、こちらに背を向けて腰にだけシーツを纏ったクリスが、全裸で寝ていたのだ。

 そしてそのベッドの上は、乱れていた。

 自分にとっても見慣れてきた光景――要するに、事後だったのだ。

 しかし人の行為後を見ることなんて、普通の人間ならば、一生に一度あるかないか位じゃないだろうか。

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