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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章              

(っていうか、お兄ちゃんが初めてなんだからまさに「こんなのはじめて!」ばっかりだったし。あ、でも……方言は出してない……っていうか、東京育ちだし……)

 頭の中でそう一人で突っ込んだヴィヴィは、最後の⑩に引っかかる。

 ⑩ 本能を剥き出しにする!

「本能、って……? 何……?」

 ヴィヴィの薄い唇から、そうぽつりと言葉が零れたその時、

 がちゃりと静かな音を立て扉が開かれ、朝比奈がリビングへと入ってきた。

「お嬢様、もう12時を過ぎておりますよ。お早目にバス、浸かってくださいね」

 そう促してくる朝比奈を、ヴィヴィは大きな瞳でじいと見上げる。

(男の人、いた……)

「……朝比奈……」

 執事の名前を呼んだヴィヴィの瞳は、何故か徐々に据わり始める。

「はい。どうなさいました? そんなお顔をされて」

 半眼で見上げてくる主に、朝比奈は長年の付き合いで、今更そんなことに驚いたりしない。

「うん……、あのね、男の人って、単純なの?」

 ヴィヴィの唐突な質問にも、朝比奈はひょうひょうと返してきた。

「そうですねえ……。基本的には世の中のどの男性も、単純だと思いますよ」

「ふうん……」

 そう間延びした相槌を返すヴィヴィは、小さく唇を尖らせる。

(そして女性は、男性のその単純さに振り回されるのだね……。まあ、その逆もしかり……)

「ささ、疑問が解けましたのなら、バスルームへどうぞ。頼みますから、寝ないで下さいね」

 まるでヴィヴィを追い立てるようにそう言ってくる朝比奈に、ヴィヴィは重い腰を上げるとバスルームへと入った。

「はぁあああ~~……」

 重い溜息を吐いたヴィヴィは、それでも風呂に入るため、纏っていたニットを脱いでいく。

 その頭の中では、「本能を剥き出しにする」についてぐるぐる考えていた。

(う~ん。ヴィヴィがお兄ちゃんを襲ったのは、あれはこれ以上ないほど “本能剥き出し” だったんだろうな……)

 肩を落としながら、ニットの下のキャミソールをたくし上げたヴィヴィは、そこでふと手を止めた。

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