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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第77章              

「ええと、365日/年÷7日/週=約53週/年……。つまり、53人と付き合えば、いいの?」

 ケイトが斜め上を見上げながら、そう頭の中で計算してみれば、

「いや、一人につき一週間ずつ増えてるんだから、そんな単純計算じゃなくて――」

 マイクがその計算式に疑問を呈す。

「はいはいっ! その前に、女性恐怖症になるに一票!」

 アンジェリカが手を挙げて、面白がれば、

「ゲイになるに一票」

 ジェイソンが悪乗りし、

「13人目の彼女に刺されるに一票」

 アレックスが恐ろしい予想を披露し、

「ただのシスコンに戻るに一票」

 カレンがとどめを刺す。

「ヴィヴィは?」

 皆の意見を面白そうに聞いていたヴィヴィに、ケイトが聞いてくる。

「え~? じゃあ、理想の相手に巡り合えて、18歳で結婚しちゃう♡ に一票!」

 ヴィヴィは胸の前で夢見るように手を組み、うっとりと呟く。

「「「それはないわ~」」」

 クラスメイトの大多数が、ヴィヴィの予想をそう一蹴する。

「そう? クリスも?」

 ヴィヴィが目の前の当人にそう尋ねれば、

「ないわ~……」

と本人自身にも否定された。

「ないか~」

 ヴィヴィがそう続ければ、皆に笑われる。

「しっかし、3日後に世界選手権に旅立つ、トップアスリートの会話じゃないよな、これ」

 3月13日に男子シングルのSPが始まるクリスは、その前日に英国入りする。

 アレックスがそう言って、呆れた様にクリスを見つめれば、ケイトが続ける。

「本当に……。普通なら、彼女にフラれたばっかりって、めちゃくちゃへこんで、何も手につかなさそうなのに」

「僕、普通じゃないから……」

 そうぼそりと呟いたクリスに、皆が苦笑する。

「自分で言っちゃったよ」

 クラスメイトはそう言って面白がっているが、ヴィヴィは前髪の下で眉根を寄せる。

(ん~……? あんなにラブラブだったのに、なんで? クリスの「すっきりした」の意味も分かんないし……)

 3人目の彼女・ローラは、あれからヴィヴィが知るだけでも2回、篠宮邸に遊びに来ていた。

 順調なお付き合いが続いているものとばかり、思っていたのに。

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