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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
グレイシー・シルバーにマイクを渡したヴィヴィは、彼女が答えている間、自分が首から下げている小さな金メダルを手に取り、しげしげと見つめる。
掛けていることも忘れるくらい軽くて、直径4センチしかない薄く小さなメダル。
けれど、これはSPで健闘したから貰えたもの。
(これ、宮田先生に差し上げよう……。貰ってくれるか、分かんないけど……ふふ)
ヴィヴィはそう心に決めると、会場から笑いが上がったのにつられて顔を上げ、ユリア・リプニツカがマイクを握りながら答えている姿へと視線を移したのだった。
3月13日(火)からバーミンガムへと入っていたヴィヴィは、常にマスコミに追い掛け回されていた。
13日にクリスのSPのリンクサイドに立ち、14日に自分のSPを終え、15日は夕刻から男子FPのリンクサイドに立つまでの数時間、ヴィヴィは応援に駆け付けてくれた親族達と観光をしていた。
しかしパパラッチがぞろぞろ付いて来るため、ヴィヴィは親族達に申し訳なくなり、自分だけ早々に観光を取り止めた。
ISUオフィシャルホテルのヒルトンに戻ったヴィヴィは、「私も観光はいいや~」と言って、自分に付き合って帰って来てくれた従姉妹のサラと、ホテルのカフェにいた。
「ごめんね~。せっかく皆で楽しく、観光する筈だったのに……」
眉根を寄せて謝るヴィヴィに、サラは笑う。
「全然いいって。私は別に、観光には興味なかったし」
そう言って、生クリームがたっぷり乗ったココアをすすったサラに、ヴィヴィは首を傾げる。
「そうなの?」
「うん。ヴィヴィとクリスに会いたかっただけだからね~」
サラの住むエディンバラは、ここバーミンガムから、飛行機で1時間と少し掛かる。
13日からずっと学校を休んで応援に駆け付けてくれた彼女に、ヴィヴィは頬を染めてお礼を言った。
「……あ、ありがとう……」
「あ、照れた」
ヴィヴィを見てにやっと笑ったサラは、「それに――」と続ける。
「パパラッチに追い駆けられるなんて、絶対無い経験だもんっ! ハリウッドセレブみたいで、ドキドキしちゃった~っ 帰ったら皆に自慢しよう!」